平成29年度の先駆的空き家対策モデル事業成果が出揃ったので、見てみた(その1:空き家の発生防止7団体)

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以前、【暫定版】平成29年度先駆的空き家モデル事業の事業成果報告書をまとめてみたで、半分程度ですがまとめたものがあります。5/15頃に国交省サイトも更新され、先駆的空き家対策モデル事業に平成29年度の事業成果が出揃いました。早速見ていきたいと思います。

目次

先駆的空き家対策モデル事業

今回は大きく4分類されているので、その分類にしたがってみていこうともいます。分類は、1.空き家の発生防止、2.空き家に関する相談事例の収集、体制の構築、3.空き家の利活用・流通促進、4.空き家に関する情報共有となっています。

このブログの読者ならどれも関心が高いと思いますが、4については1件のみなので、基本的に、防止、利活用、体制構築の3つのどれかに該当すると考えていいです。

防止というのは社会問題として自治体が行うイメージが強いですが、そうはいっていられない状況が大きいはずです。利活用は民間の知恵も入れつつというところで注目されやすいところです。ただ利活用自体もそもそも体制が整っていて、かつ防止がされていて、総合的に体制を作り、抑えつつ、活用して減らす仕組みがあって機能するわけです。

長くなりましたので、本記事は空き家の発生防止に関する7団体となります。他取り組みは後日記事にしてみます。

空き家の実態や所有者ニーズに適した空き家流通と発生予防による地域活性化促進事業(ランドブレイン株式会社)

空き家の実態や所有者ニーズに適した空き家流通と発生予防による地域活性化促進事業と、タイトルが大分長いですが、最も興味深かったのは、「継続的で効率的な空き家の実態把握」というものです。

詳細は事業報告書にありますが、1つは水道閉栓情報を用いれば、空き家でも通水しているところが3割はあることから、閉栓しているところは概ね空き家だという話です。ただそれでは空き家全体の7割程度ですから、参考程度というところになります。概要把握という意味では効率的ですし、今までの実態調査などでもよく見られる手法です。

クラウドサービスを使った空き家実態調査が気になる

注目すべきは、クラウドサービスを使った空き家実態調査です。具体的には、空き家自体の調査はゼンリンの空き家コンテンツを使って、それらをタブレット端末を用いて(iPad等)調査するということです。またこれらのアプリ自体は、kintoneというサイボウズが開発したカンタンマップを使っています。顧客管理の事例ですが、絵的にはこのイメージが近いでしょう。空き家コンテンツデータもここにインポートしていると考えられます。

コスト的には空き家コンテンツの購入費用、タブレット端末のレンタル費用、カンタンマップなどクラウドサービスの費用があり、結構な金額になります。自治体規模によりけりですが、空き家調査費用をいわゆる外注する形で民間に依頼刷るときの事業予算が数百万円でしょうから、600万程度と仮にします。

今回の手法をざっくり考えると、

・空き家コンテンツの購入費用 数千軒程度。おそらくポイントデータやGISデータとなると数十万円以上すると考えられます。

・タブレット端末レンタル費用 今回は4名分×5ヶ月のレンタルとなるので、iPadAir2を1ヶ月で1台6,000円とすると、5ヶ月で3万円。4台分で12万円程度になります。(タブレンのデータを参照

・クラウドサービス利用料 カンタンマップの費用はこちらにあるように、初期20万+月額でカンタンマップが2000円、これはkintoneの契約が必須でしょうから+1500円、5ライセンスまでは附属する(調査員4名、事務員1名等)として、3500円の月額をいつまで使うかですが、半年から1年は使うとして、2万から4万程度と計算できます。初期費用を入れると1年で、24万程度となります。

・調査員の人件費 調査規模によりますが、調査自体が紙調査記録よりもスムーズなので、その分を仮に従来2ヶ月かかるのが1ヶ月程度と半分程度になるというメリットも考えられます。

クラウドサービスを使えば費用は相当抑えられそう

ざっくり費用は、100万程度もあればいけるということになります。従来の手法とは、自治体空き家調査でも用いられているアナログなやり方ですが、600万は適当すぎますが、従来の方法よりはコストダウンが可能ということがいえそうです。

他には共通の費用として、アンケート調査は郵送費がかかるので、仮に往復代として1通160円程度としても、1000件16万円となるため、この郵送費は結構大きい金額ですね。これはアナログであろうが一緒です。また登記情報を得る場合の費用も入れていません。これらも1通300円程度はかかるとすると、大きな金額になってきますね。こちらも1000件あれば30万円必要です。これらを入れれば、150万程度というのが御の字かもしれません。ざっくり費用ということで。

なお、住宅・土地統計調査の空き家数と実態調査での数は異なるのが普通だといっていいでしょう。愛知県の自治体で調査済みのデータを見ても、統計調査の1割程度しか空き家はありませんでした。これは以前書いた気がします。空家実態調査の現場から でも、空き家率が10%程度はよく見る調査ではありますが、実際には2%から5%程度となっていて、単純に10万戸あって、1万1千程度で約10%の空き家率です。実際は上限で2分の1か5分の1程度ということとなると、5500程度から2200程度が大体の数値となります。

愛知県でいえば、一宮市が人口38万人、世帯数約16万で、空き家実態調査の結果は、約1,800件でした。これで調査委託料が平成28年度の調査で、平成28年度調査費用が、決算ベースで、平成28年度一宮市歳入歳出決算事項別明細書のP.301にありますから、約1300万円かかったことになります。八千代市は世帯が約9万ですから大分異なるものの、参考値にはなりそうです。

ではこれは万能かというとそうではなく、クラウド上にデータをアップしている点でセキュリティを懸念するということは資料を読んでいて感じましたし、報告書にもその点が懸念ということがありました。そういう意味で紙のデータは強いですが、その点は情報をどう守るかという観点でどこまでコストをかけるかによりそうです。紙が万能でもないからですね。

以上が、実態把握の話が一番気になったので調べてみました。気になる方は事業報告書を確認してみてください。

松田町空き家発生予防事業 (松田町)

松田町の事業は、発生予防と空き家対策の2つです。前者はリーフレットを作るなどの告知がメインです。また空き家対策は賃貸物件の空き家対策ということで、賃貸住宅制度の説明会というのが事業となっています。

これらの事業自体に先駆性があるかは疑問ですが、神奈川県にある小さな町(人口1万人、4500世帯)が行ったという意味では意識が高いといえます。

高齢化率が高い小さな自治体の取り組みという点が面白い

実際に報告書を読むと、空き家の管理を促す冊子でなく、「発生予防のみに焦点を絞り、行動するためのリーフレット」ということを評価するというようです。ただ厳しいようですが、おそらく松田町が、高齢化による空き家発生予防としたように、高齢化に対して危機感を持っています。平成25年度が最新でしたが、松田町統計データを見ると、平成25年度に65歳以上は3,224人であり、高齢化率は27.4%という数値になっています。

講演会などのイベントについては、101名の延参加者がいたにもかかわらず、個別相談が1名という実績のため、空き家テーマのことをやってもそう簡単に意識が変わるものでもないということも言えます。

次に、町内の賃貸住宅が50%空室というデータがあるようでそこからの空き家対策として制度の紹介を狙ったものがあります。これについては、説明会自体が参加者が延17名と少ないという結果になっています。さらっと書いていますが、民間賃貸住宅の入居率が5割ですと、そもそも賃貸住宅として経営が成り立たない気がします。実際は新規マンションはおそらく建たないので、既存マンションアパートが空室になっているから活用して欲しいということだと考えられます。

そういう意味では投資回収が既に終わっているかどうかを聞くべきだったのかなと、ただ行政が行う説明会でそのようなアンケートが出来るかは非常に微妙です。実際には終わっていれば、あえて活用をそこからするかの話ですし、終わってないなら即効性のある制度や取り組みを期待するからです。

民間賃貸オーナー向けの制度説明は微妙感が残る

さらに追い打ちをかけるようですが、制度って何ということで見ると、セーフティネット住宅制度でした。これについてはそもそも活用が微妙ということを先回調べたばかりでしたが、住宅確保要配慮者向けのセーフティネット住宅件数は半年で622件だったように、そもそもセーフティネット住宅化したい大家さんが少ないということも言えそうです。ニーズまたはやりづらい制度をあえて使う人はいません。先回の記事では、結局経済的支援も微妙で、さらに国と自治体の負担がかかることから、自治体側も勧めづらいというのがあったかなと感じました。

ちなみに、神奈川県のセーフティネット登録件数は9件で、松田町は0件でした。

ホームステージングというのがいきなりでてきますが、中古物件などの既存マンションアパートを家具や小物を入れてアップデートしていくとう内装メインの話ですが、これも移住定住や空き家バンクと結びつけたほうが筋が良いと感じました。例えば、松田町空家バンクについてでは、売り物件はなく、賃貸物件のみがあります。賃貸物件リストをみて気づいたのですが、最新番号が95ということで18番まで物件があります。ざっと約40の空室物件があるといえます。

ところで、松田町など町の規模では住宅・土地統計調査の調査区から外れます。そこで、神奈川県で最も小さい市であろう南足柄市を参考に見てみます。データはExcelデータですが、住宅・土地統計調査 / 平成25年住宅・土地統計調査 / 日本の住宅・土地から確認出来ます。南足柄市は、総住宅数が約17,000あり、居住世帯は15,000程度、ここで、戸建てが12,000あり、共同住宅は2,500程度となっています。(最新の世帯数は約16,000)

ここからいえるのは、松田町の3倍規模ですから、ここから比較すると、南足柄市のデータから3分の1程度の共同住宅つまり、800程度が松田町にある共同住宅であろうと推測できます。そして、800とは800世帯=800戸と仮にするならば、上の空き家バンクの写真などをみる限り、低層1,2階建てで、1棟10戸程度の物件が多いであろうとすると、800戸=80棟となります。

実際のデータは分かりませんが、半分が空室であるなら、400戸程度が空室といわれているわけです。これはなかなか興味深い数値です。空き家バンクはそういう意味で、民間の賃貸住宅の空室率が大きいので空き家バンクに登録しても入居者を集めたいという松田町の意思が感じられます。逆に言えば、民間のhomesなどの賃貸サービスでは成立しない部分をそのまま空き家バンクにオーナーがスライドして掲載しているのかなとも思えましたが、このあたりは推測にすぎません。ちなみに、松田町のhomes賃貸物件結果は67件でした。

「見える化」による低廉不動産の流通化と「実家信託」の普及による不動産凍結防止(特定非営利活動法人岐阜空き家・相続共生ネット)

低廉不動産の見える化という視点がユニーク

気になったのは、低廉不動産の流通難をどう促進するかという第一義の狙いです。認知症における不動産凍結の課題については、民事信託などがまだ広がっておらず、啓発という感じが強い印象でした。

低廉不動産とは、つまり空き家がボロボロで建物価値はほぼなく(むしろ取り壊しや諸費用を入れるとマイナスになりかねない)、どうしようかと処分に悩むものです。更地にして売ればまだ売れるかというところで、解体費用が取れるかどうかなどもありますし、そもそも経済的な合理判断でなければ、思い入れなどで売れないこともあります。

見える化という点では、基本的にかかるであろう費用を算出し、空き家所有者に対して判断材料を提示することで、流通に載せてもらうという感じです。そのためにやられたのは、まず空き家の見える化事業としてアンケートを送付して619件、返信が53件あったので、見える化したい人がいたということになります。しかし53件の内だと思われますが、実際に空き家実態調査として現地を見て査定まで踏み込めたものは26件のようです。また課題にもありますが、査定とはいえリフォーム意思がないのに見積もりは出せないという(言わんとすることはわかりますが)実際値に近いものが出たかはかなり疑問となっています。例えば、見積もりが要相談という感じになり、300-500万の範囲でというような見積書になったのではないかと推測出来ます。

そしてこの見える化したデータからコンサルティングなどをしたりして、例えば空き家バンクに載せていき売っていくなどが考えられます。

所有者への意識啓発というのをどこまでやるかも課題

報告書の冒頭での課題意識としては、そもそも所有する空き家が負債となりかねないという点をこういった見える化で意識づけしていくということだったはずですが、実施後の課題も多少問題が見えるようになったかもしれないが、結果的に所有者の啓発というところになっています。

また上の26件で、所有者が立ち会うのが9件で、相談までいったものが1件となっていることから、これが全て同じ母数であるとするならば、

53→26→9→1

という数字の流れになり、100人いたら二人程度しか相談しないということになります。また、見える化として価格等をシミュレートとしたものが26件あっても、9件つまり3割程度しか所有者が動いて立会する意識がなかったともいえます(もちろん日程調整等があわなかったなどもありえそうです)。さらに、そこから現地を一緒に見て意識が高い人でも1割しか、相談にいかないというところです。報告書を作成したのが1件というのと合致しています。空き家バンクにそのまま掲載されたかは不明です。

100人に2人しか動かないというのは、冷静に考えればニーズはゼロではないが、現時点で相談を求めない、または困ってないというのが実際です。ここは専門家の見識とずれるわけですが「負動産化」しているように専門家からは見えるけど、実際の所有者はそれに気づけない。まるで裸の王様という状態といっていいでしょう。

一方で、所有者からすれば「自分のもの」に何か言われるのも癪なわけですし、「いやいや地域や社会の問題ですから」といっても、それが突破口になる聞き分けが良い人ならとっくに話が進んでいるわけです。

ここにある溝、つまり所有者と専門家の情報格差であったり、住宅というプライベートなものであるという特殊性(同じような家はあっても同じ家はないこと)、それらからどこまで突っ込んでいいかのさじ加減が難しいことが今回の事業では見えてきたのが成果といえる気がしました。

もっといえば、所有者でどうしようもないからただでも売ってしまえという意識がある人は既にインターネットなりなんなりで売りに出ていますし、売ろうとします。売れたらいいなという意思レベルでなく、「自分ではなんともしがたいから、売ると決めた」という強い意思のはずです。更地価格の査定が意味があるかは参考値として100万500万、1000万くらいの価格帯は相場的に見えたとしても、状況により変わるし、立地や状態によって変わるので「すなわち使える情報」となるかも疑問です。つまりここには所有者の意思がある前提+査定価格を含めた見える化、または使える流通網があることで初めて意味がなし得るのだと考えられます。

ここでは400万以下(建物を解体し更地にして売る。その場合更地価格から解体費を引いたもの)なら、それらは低廉不動産と扱っていますが、感覚的に不動産を経費をかけて売って数百万なら確かに低廉という感じです。一方でここでいう低廉価格帯も社会の変化で変わってきます。シンプルにいえば空き家が多い場合は売りたくても買う人が少ないので売るに売れないから価格が下げ止まりするということですし、賃貸価格も下がってしまうことになります。そうなると、暫定的な低廉価格も意味をなさないかもしれません。

思考シミュレーションに近いですが、所有者がどう考えるかです。例えば解体費が200万くらいかかって、基礎経費が100万くらいかかるなら、300万で売ったら手持ちは残りません。それでも売りたいかと考えるかとなると、不動産売買や何かしら空き家トラブルやまずいことが起きない限り「現状維持」に走る人が多い気がしました。労力をかけても見返りが少ないからです。

所有者にとっては、未来への不安がまだ痛みになりづらいのが現状か

一方、当然ですが、認知症になったらどうするのか、維持管理をしているならいいがいつまでやり続けるのか、など今後想定される課題があるわけです。未来はこうなるから「今変えていきましょう」は、ほとんどの人には刺さりません。実際に価値をおくものが違っていたり、今維持ならいいじゃないかとなり、「未来に発生する痛み」を今に置き換えたり、今後痛みが出てくるから「今やる」人は少ないということですね。例えが微妙かもしれませんが、「虫歯になったら歯医者にいけばいい」という感覚の人に、「毎日の歯磨きなどが大事ですよ」という予防観点は刺さりづらいでしょう。

最後に気になったのは半分の人が査定を希望しなかった理由です。それは報告書から分かりませんが、更地価格で売った場合、700,800万程度あっても、解体費用が高くつくために、26件中半分程度は低廉不動産となっています。査定をしても仕方がないと思ったのか、そもそも売買をするしない以前に「客観視をする」というワンクッションおいた提示が功をなさなかったのであれば、かなり問題という感じました。つまり、あらゆる手でこちらがいろいろやりますし考えますといっても動かないという数値なのではないかなと思いました。

もちろんこれらの所有者の意識レベルは今後変わっていくはずです。一概に査定をしないから駄目だということではありませんが、状況をデータで見抜いたりして、早めに動かないと遅れてしまうということはどのような時にも起こることを踏まえた上で所有者であったらそのように考えたいと強く思いました。

本事業のとくに低廉空き家の流通化は少しでも進めば価値があるため、今後が興味深いところです。

所有者不明の予防及び財産管理人制度活用による流通促進検討 (京丹後市)

自治体とは思えないようなチャレンジグさに称賛したい

自治体には非常に良い意味で似つかわしくないチャレンジングな事例で、好感が持てました。やったことは2つで、一つは相続登記をしていかないといろいろ大変だからしましょうというパンフレットでの啓発。これは死亡届など被相続人が発生し、相続人などに渡すものです。

もう1つは、相続財産管理人制度を用いて所有者がいない空き家を流通できないかという試みであり、現時点で5月11日までが買取希望者となっていますがどうなっているかは不明です。ただこの取組み自体は、実際には手続きの流れを見ていくとうまくいかないかもしれないが、現行制度でどこまでやれるかに突っ込んでいる点が非常に興味深いところでした。

既存制度を用いてどこまで現場の問題を解決できるか

財産管理人制度活用による流通促進では、図解でわかりやすく書かれています。従来の課題は、家庭裁判所に予納金を支払う必要があるが、購入者がいつ現れるか分からないため回収不可能リスクが高く着手できないという点でした。そうであれば、購入したい人を先に募り念書として買付証明等を作っておき、その上で財産管理人の手続きを家裁に申請し、その上で財産管理人と購入希望者で売り渡しをして所有権を移していくという流れです。

フローがやや長く、8段階あり、自治体、宅建業者、購入希望者、司法書士会、家裁などプレイヤーが多岐に渡ります。相続財産管理人制度を活用した流通促進(案)では、細かなやり方が書かれていて非常に勉強になります。

報告書の中で、相続人不存在という確認の意味で戸籍等を調査した件数で、35件あり、たくさんの戸籍謄本を見ていって、結果的に5件が不存在ということになっています。空き家の相続人(所有者)が不存在というのは、死亡していたり表題登記のみに限られたり、登記がなかったというもので構成されています。そういった所有者がいない空き家はどうしようもないわけですが、とはいえ放置できないのでこういった取り組みは文字通り先駆的だと感じました。

そしてこのうち5件が不存在だったところで、1件を実際に試しに購入希望者を募ったというのが本取り組みとなります。所有者不存在空家等の購入希望者を募集しますで募集要項などがあります。京丹後市においては空き家数からみれば、不存在の確率は高くないのかもしれませんが、この問題はそもそも京丹後市のみで起きているわけでなく、他の自治体でも同様に起きていると考えられます。

参照されていた先回平成28年度の川口市の取り組みもあります。所有者不明等の空き家の解消に向けた財産管理人制度活用モデル事業においては、特定空き家とされたものが不存在であったけどどうするか。その場合に財産管理人制度が使えるのかというものでした。

今回の取り組みがどうなるかは要注目です。相続人不存在が一定数あるわけで、そこから今回の取り組みが良い意味で刺激となって、うまく制度が使えて空き家を活用できるきっかけとなると良いですね。

『オール北九州』で推進する空き家・留守宅対策事業(北九州空き家管理活用協議会)

空き家管理をする民間視点の発想

協議会が主体となって、放置空き家をどうするかということで、啓蒙したり実際に問い合わせ成果や成約があったというものです。民間の空き家管理会社の視点で面白いですね。

空き家バンクの機能拡充という点では、取り組み自体はセミナーや講演会などを行いそこから相談者が延650名程度であり、そのうち相談が約6%の37名。そこから13名が案件となり(2%)、成約となったのは6件(約1%)という数字が出ています。また成約のうち管理を促すのがメインだったのか5件が管理案件で、活用案件は1件という内訳となっています。

1%という数字は、岐阜の事例でもあったように、実際に動く方は対象者を一定程度絞っていても限られるとみるべきか、1%程度は成約が出来ると見るかは人それぞれです。感覚的には少ないかなという印象です。

セミナー等の啓発に動けるシニアに動いてもらうアイデアが面白い

実際には動ける人はシニアなどで元気な人が動いているということですが、これらの体制が継続的に動けるかは分からず、実際に啓発以外では、空き家発掘は出来るが実際には250件の目視(だと思われる)に対して不動産登記簿からの所有者(登記情報)に出したが、ほとんどうまくいかなかったようです。ここからセミナー等が現時点では有効ということになっています。

空き家の発掘の仕組みから対応などについては、そこまで進展はなかったかなという感じです。団体自体の実績や信頼の醸成はあったし、実績も出来たのでそこはグッドですが、公益性や信頼性を高めていけば、仕組み化できるのかと言う点と、管理まではわりと出来るけれど活用となると話が異なっていくし、また自治組織レベルで出来ることもかなり限られるのが現状でしょう。

マンパワーとして動ける人は増やしていくのはそのまま啓発啓蒙としてグッドですが、民間事業としてはいわゆる不動産活用セミナー等で不動産投資など単価が高いものはセミナー等の成約数が1%でも十分といえますが、管理案件などは数千円(月額)であり、事業的にはそこだけみれば厳しいといえます。

シニアにどう動いてもらって、それこそ副業・複業的視点でうまく事業化できると、シニアの働き方と空き家管理の解消が同時に解決できるかもしれませんね。

民事信託を活用した空き家化予防・解消スキーム構築・実践事業(福岡県青年司法書士協議会)

こちらの取り組みでは、司法書士が啓発活動をしていくことがメインです。民事信託制度を使うことで既存制度より有効に使えるということです。

見えた課題は自治体が動けないという点

実際には、パンフレットや自治体訪問、セミナー開催などをしたものの、空き家所有者の意識がそこまで追いついておらず、自治体も専門職員等がいない状況でどちらかといえば、啓蒙をする中で課題が見えてきたというのが成果と言えそうです。

自治体の対応が面白く、実際に民事信託は有効だしやってほしいけれど、それを自治体がどうこうするということは出来ないというのが大体といえそうです。実際に自治体職員からすれば、一民間団体であれば司法書士だろうが関係なく、イベントとして啓蒙活動をしていただき、特段負担がなければやって欲しい。でも、それで自治体側で予算を取れるかというとそこまではない。というのが実際です。ひどい話というよりも、これは自治体と何かやろうとしたり、何かやり取りがあれば至って普通の対応でしょう。

その中でいえば、糸島市のみが広報誌掲載が出来たというのは、先回調べた移住相談AIなど自治体での取り組みを調べてみたでありますが、移住相談AIを率先して行い、空き家バンクなどの活用など意識が高い自治体といえるからこそ出来たのではないかとも考えられます。

空き家バンクと認知症は専門家ならではの視点。ただし一般認知は遠そう

また空き家バンクでの認知症という視点は面白いのですが、現時点だと早すぎていてそこまで出来ないというのが実際でしょう。出来ないというのは自治体の空き家バンク側がですね。逆に民間側であり、例えば全国版空き家バンクの運営者はLIFULLやアットホームですから、こちらに提案をしてみたほうが面白いかもしれません。もちろん、データ自体は自治体から上がってくるのですぐに何か出来るわけではないのですが。実際に空き家バンクに載せたその後まで考えて動ける人はそもそも空き家所有者に限らず見越して動ける人は少ないというだけではないかなと感じました。

また空き家バンクですら機能してないのに、さらに追加機能?でもある認知症がさらにというのは、さらに高機能な視点となるので、なかなかというかやれないのが実際なのでしょう。

また自治体側では、空き家バンクの業務と特定空き家の業務が分断されていて、別々という印象というのも興味深いです。当然、自治体側は後者は力を入れるが、前者は放置気味になります。そうでないところは、移住を促進するなど自治体が気合を入れているところでなければ、空き家バンク自体を活用する意識がないため、自ずと上のように認知症、民事信託、空き家化の予防という考えは抜け落ちるし、あっても後回しになるということですね。

各事業者と連携した総合的な空き家相談窓口開設モデル事業(宗像市)

最後は自治体の相談窓口開設などの事業です。オーソドックスな事例といえるかもしれません。

空き家相談窓口を設置して意識啓発等を目指すオーソドックスな試み

取り組みとしては4つあり、相談窓口の設置、空き家関連サービスの見える化、相談会開催、抑制のための啓発となっています。面白そうなのは空き家関連サービスの見える化でしょうか。

本事業の目的自体はなかなか興味深く、空き家の所有者が相談出来る窓口を作ることでそれを通して、いわゆる空き家バンクなどに出てくるものを増やしたり、流通を増やすことを狙っています。実証的であり、試験的な取り組みのようです。

結果としては、半年間で74件の問い合わせがあり、サービス登録は21件、受注や成約は11件ということです。1,2割の受注率といえそうです。多いものは、空き家バンクへの登録が7件、草刈りなどが5件、空き家管理が5件ということで、これらが主な成約だったといえそうです。

オーソドックスといえるのですが、一方でこういった窓口を作れるか、作るとどこまで意味があるかは意外に灯台下暗しというところです。もちろん窓口はあったほうがいいのですが、作ったところで専門職員がいたり、然るべき事業者や専門家がいなければ「相談はあったけど、話して終わり」になりかねないからですね。そういう意味では検証の価値はありそうです。

おわりに

いろいろな団体が空き家の発生防止に対して知恵を使い検証しているのは素敵なことだと思います。それらから学び、ヒントとなれば幸いです。

長くなりましたので、他の取り組みについては後日別記事にて書く予定です。

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名古屋の不動産市場を知る

日本ランドエンジニアリング株式会社では、数年に一度のペースで、名古屋中心部エリアの不動産状況を調べています。2017年度は変貌する名古屋5(2017年6月作成)を発行致しました。名古屋の不動産市場を見るデータとしてご活用頂ければ幸いです。

名古屋中心部エリアの調査レポートです。表紙、裏表紙込みで全体で12ページとなっています。配布ファイルはPDF(約2.5MB)で、データファイルはA3サイズですが、A4の縮小印刷でも可読可能です。

レポート内容は、

1.建物の主たる利用別用途図(P.2-3)

2.建築中および5年以内に新築・建て替えられた建物(P.4-5)

3.既存および建築中ホテル(P.6-7)

4.所有権の異動(売買および相続)(P.8-9)

5.投資法人が所有する建物(P.10)

6.名古屋市中心部の状況(P.11)

となっています。

PDFデータをご希望の方は、変貌する名古屋(別サイト)にてダウンロードをお願い致します。

空き家の教科書では、次の一手や戦略が立てられるようになると考え、本資料を配布しております。

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