自治体予算が縮小傾向の中、3つのニュースから自治体の知恵を考える

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人口減少社会という中で、自治体は限られた予算の中で行政サービスをしていくことになります。今回は自治体が厳しい予算で奮闘するという視点で最近の流れを考えてみます。

自治体ドットコムの破綻

11月頃ですが自治体ドットコムの破綻というニュースがありました。
地方自治体向けポータルサイト「自治体ドットコム」運営 破産手続き開始決定受ける

自治体ドットコムの規模は大規模とはいえないと思います。自治体ドットコムの自治体向けコンサルや事業については2000年頃からで地域ポータルサイトなどが流行りだし、その自治体向けという切り口で「自治体向け情報の提示」というのが自治体ドットコムという会員向けサイトだったと考えられます。

起業当初のコラムが地域情報化計画の実現を支援する『自治体ドットコム』に、代表加藤氏により書かれています。当時の意気込みが書かれており新鮮な印象を受けます。倒産記事からは、自治体の予算の縮小が下げ止まり、そのまま売上げに影響を与えたと考えられます。

自治体は自治体経営を外部の専門家の意見を聞くのもあるわけですが、あえてお金を出してということよりも、むしろ自分たちでやれることはやらなければいけない。そして予算が増えることはまずないという局面になっていると考えられます。

ここでいえば、全てのコンサルが無駄とは思えませんが、自治体経営において効果や価値があるのかどうかを判断したところで、必要ないと言われればそういった仕事はなくなっていきます。自治体行政向けコンサル業という仕事も生き残りが既に始まっていると言えそうです。

生駒市の副業促進

地域貢献活動を行う職員の営利企業等の従事(副業)の促進についてという取り組みが、奈良県生駒市で今年夏に開始されています。このニュース自体は最近知りましたが、

より一層厳しい自治体経営が予測される少子高齢化時代にあって、持続可能なまちづくりを進めていくためには、市民と行政が互いの立場を認識し、自覚と責任を持ってそれぞれが役割を担い、協働しながら地域課題を解決していくことが必要です。

(同上より引用)

こういった文章は見慣れている方も多いかもしれませんが、ある種の言い回しだとしても、自治体経営が楽ということはまずないでしょう。そして協働という言葉も言い尽くされている感があるため、結果的にはどういうことをやっていくかというアクションが求められます。生駒市の場合は、地域貢献活動などは副業としてどんどんやってもらいたいというメッセージになります。

運用ルールを読むと、細かな点がわかりますが、対象となる活動が良いかどうかはおそらく都度検討されるということでしょう。運用についての資料には、例えばこんなことが書かれています。

2 対象となる活動
次の要件をすべて満たす活動であること。
(1) 公益性が高く、継続的に行う地域貢献活動であって、報酬を伴うもの。
(2) 生駒市の発展、活性化に寄与する活動であること。

(中略)

5 審査基準
以下のいずれにも該当していること。
(1) 勤務時間外、週休日及び休日の活動であり、職務の遂行に支障を来たすおそ
れがないこと。
(2)地方公務員法第33条に規定する信用失墜行為の発生のおそれがないこと。
(3)活動先の団体等と生駒市との間に特別な利害関係が生じるおそれがなく、かつ
特定の利益に偏することなく、職務の公正の確保を損なうおそれがないこと。
(4)報酬は、地域貢献活動として許容できる範囲であること。
(5)生駒市内における活動であり、生駒市の発展・活性化に寄与する活動であるこ
と。
(6) 営利を主目的とした活動、宗教的活動、政治的活動、法令に反する活動でな
いこと。

地域貢献活動を行う職員の営利企業等の従事制限の運用について より引用、太字は筆者注)

ぱっとみて、「民間企業でアルバイトをする」ことが解禁されたわけではない、ということが分かります。地域貢献活動など公共性が高いものというところで、例えば小学生向けのサッカー教室をそこそこの報酬を得て行う場合などはおそらくオッケーなのではないかと想像します。他にも学童保育だったり、教育的な要素がありかつ学生向けであればわりといけるのではないかなと。

またNPO活動など、NPOに所属したり立ち上げたりして報酬を得ることもそもそもそれらは「副業」かどうか分かりませんが、堂々と行えるということがいいのかもしれません。一方で、報告書を出したりと手間なのでそのあたりはどうなるかは分かりません。

生駒市の例から、一見すれば、公務員職員にとって働き方として副業が緩和された印象を受けます。逆にいえば、民間企業でも働き方改革という形で「副業」の流れが出てきていることから、そうしなければ給与や報酬が増えていかない点が、自治体にも当然ありえるのかもしれません。例えば、お金を得るためではなく自分の活動として地方や街のためとして嬉々として動いていることも誰からも認められなければやはり辛いですし、適切な報酬や利益にならない活動費などは当然もらわなければ、活動維持も困難です。

広島県福山市は副業のみで戦略顧問を募集

地方自治体が“副業限定”で人材募集 その狙いとはに詳細が書かれています。以前宮崎市でマーケティング専門官という職種を民間から募集したというケースを思い出しましたが、今回は専業でなく、副業限定というユニークな話です。なお、転職サービスのビズリーチにより案件募集がされていました。募集特設サイトは兼業・副業限定で戦略推進マネージャーを募集。攻めの発想で行政に新しい風をで見えます。

報酬は週1回で2.5万円で交通費・宿泊費別途支給とあり、月額で10万円程度です。おそらく東京等都市圏で勤務していて、かつ福山市出身者は広島県出身者などか、または地方に貢献したいと考えるビジネスマンが対象だと考えられます。求められるものも、戦略などハイスキルなもののため報酬が見合っているとは思いませんが、自治体として出せる金額とやって欲しい価値はこのようにギャップがあるのも事実でしょう。

市長自ら外部の声を聞くだけでなく組織に入って一緒に変えていくことは、一般的に内部組織からは煙たがられるはずです。ただいうだけでは意味がないので、自ら変えていくこと、そしてなりふりかまわずやっていくことという意味で非常にチャレンジングな取り組みだとも考えられます。応募者は約400人で、採用となるかは分かりませんが、こういった取り組みがおそらく今後自治体に普及していくかもしれません。もちろん、福山市という自治体の認知度を上げるという意味もあるでしょう。

ビズリーチに限らず地方と首都圏などを転職などでつなぐサービスも最近増えてきています。こういった民間の転職サービスで、東京一極集中が消えるわけではないでしょうが、とはいえ確実にマッチングが増えていくことで、一つの選択肢として、副業で公務員をするということも出てくるかもしれません。

おわりに

今回は3つのニュースを取り上げてみました。1つは、自治体の予算がない中、各自治体はアイデアを振り絞り実行をしていくことが求められているということです。アイデアを出すだけでなく、実行をして形にしていくまでをやり遂げられるタフさが必要です。水面下でももっと大きな動きがあるかもしれません。

別の視点では、自治体の予算が限られる場合に、どういう選択肢や打ち手があるのか。それらをどこまで試したのか。またはどういう街や社会をつくっていきたいかということが問われることになります。それは計画があります、ルールに則っていますという話よりも、ビジョンという見えるイメージの話です。例えば、やや乱暴ですが生駒市のような公務員の働き方を柔軟に変えていく自治体の方が、より社会に対して柔軟な組織だと思われるので、そういう自治体に移住するまたはそういう自治体で働く、またはそういう自治体と仕事をするなどというポジティブな行動につながっていきます。これらは住みやすい街とか働きやすい街というよりも、絵が見えるわけですね。

福山市の例では、民間感覚では安すぎると叩かれるかもしれないわけですが、一方でこの募集は自治体での話です。認知のされ方にやや問題が出て来るかもしれないものの、そういった取り組みをまずやっていく、仕掛けていくことのほうが評価されるのではないかなと思います。

最後に、自治体ドットコムの破綻についてです。今後行政向けのコンサルという事業枠や予算枠などが増えることはあまりないと思いますが、一方で自治体運営をどうやっていけばいいかは実のところ誰も分かってないわけです。分かってないというのは、未来が分からないということで、予測したり考えることで、リーダーである首長(市長など)が判断をして変えていくことになります。では外部の声が不要か、民間の声が不要か、専門家が不要かというと、福山市の例からすればむしろ逆に欲しいわけですね。

今後も自治体の動向についてしっかりと見ていきたいと思います。

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