国交省の住宅確保要配慮者への空き家活用制度について調べてみた

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国が空き家を高齢者や低所得者や子育て世帯など向けに賃貸住宅登録制度を始めるという話があります。国交省で「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定となっています。日経新聞では空き家登録17.5万戸目標 国交省、単身高齢者などに賃貸でニュースとなっています。

住宅確保要配慮者と長い名前は、注意書きでもありますが「※ 高齢者、低額所得者、子育て世帯、障害者、被災者等の住宅の確保に特に配慮を要する者」とあります。これらについて少し資料を見て考えてみます。

早速、要綱PDFを見ていきましょう。

背景・必要性

住宅確保要配慮者の状況

5つ挙げられています。

1.高齢単身者が今後10年で100万人増加(うち民間賃貸入居者22万人)

忘れることはありませんが、日本は少子高齢社会となりました。人口は減ります。世代毎の人口比率がそのままであれば対応も簡単かもしれませんが、高齢者の比率が高く、子どもの数が少ないので問題となるわけですね。現状有効な手法というのはないというか、縮小均衡という理解しか私にはありません。

さて、高齢者世代でも単身者がすでに10年後に100万人増えると予想されているわけです。そして、その中で民間の賃貸マンションに住む方は2割くらいいる。この方達は孤独死などを不安視して、入居拒否される可能性が高くなります。

2.若年層の収入はピーク時から1割減。30代給与は平成9年で474万円が平成27年では416万。

要は年収が上がるかはおいておいて下がっている中、低所得者層への配慮が必要というところにつなげているのかなと思います。もちろん平均が下がっても下層が上がることもあるわけですが、ここでは細かい話は省きます。

3.若年夫婦が理想の子ども数を持たない理由は「家が狭いから」(16%)

要は子どもがいてもいいけど家が狭いという要因で作らないということもあるということですね。これについては子育て世帯を言及していると思われます。

4.一人親世帯の収入は夫婦子世帯の43%。平成26年では一人親世帯は296万だったのが、夫婦子世帯では688万円

世帯で見ればシングルマザーやシングルファーザーなど一人親であれば稼ぎ手が一人であるのと、同時に子育てもしなければいけなくなり、シビアです。これも、子育て世帯というところですが、とくに一人親世帯として低額所得者というところにつなっているかなと思います。

5.家賃滞納、孤独死、子どもの事故・騒音等への不安から入居拒否。

これは以前ニュースで見ましたが、やはり管理者、大家側などの貸し手で喜んで受け入れる人は少なく、そういうリスクは避けたいという本音があるわけです。もちろん全部ではないですが、理由をつけて断る貸し手も一定数いるということでしょう。

資料右側にグラフがありますが、大家の入居拒否感として、単身の高齢者だったり、生活保護受給者、高齢者のみ世帯であれば概ね6割程度拒否感があるということです。ちなみに一人親世帯は14%で拒否感は高齢者よりは少ないというところです。

住宅ストックの状況

これについては2つ書かれています。

1つは、総人口が減少する中で公営住宅の大幅増は見込めない。もう1つは、民間の空き家・空き室は増加傾向。まあ、1つ目については、公営住宅でカバーするのは筋が悪そうです。空き家の増加についてはもはや言うまでもないでしょう。

背景・必要性としては、これらから空き家のストックを活用して、上記ターゲットに対して住宅のセーフティーネットとして使ってもらうということになります。

また、右側の空き家・空き室の現状として、賃貸用の住宅は429万あるわけですが、耐震性があり1km以内の住宅は137万。その他の住宅は318万ありますが、同様の条件では48万あると見積もられています。

法案の概要

次は法案の概要です。あくまで地方公共団体、つまり市区町村が登録住宅等に関する計画を策定するというところです。要は国は自治体を支援する形での制度ということですね。

登録制度の創設

1つ目としては、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として、賃貸人、つまり大家さんですね、が都道府県等に登録します。大家さんが「うちの物件は拒まないよ」というアピールをするに近い形ですね。それらの情報が閲覧しやすいとか、見られやすいところにあるかはまた実際に行うときに課題が出て来るかもしれませんね。

そこでは、構造・設備、床面積等の登録基準への適合がチェックされます。登録申請したら登録できるわけではないという理解です。耐震性能、一定の居住面積などがチェックされます。

2つ目に、都道府県等は登録住宅の情報開示を行うとともに、要配慮者の入居に関し賃貸人を指導監督するとあります。つまり、大家さんが登録した物件を情報開示してね、そしてその大家さんを指導監督する(要配慮者入居時)というのがあります。これどういうサポートかは分からないのですが、具体例があるといいですね。あからさまに登録してるけど「拒否」してるとかはなさそうですが、色々と課題は出て来るはずです。

3つ目は、登録住宅の改修・入居への支援となります。登録された住宅は、改修のための費用を、住宅金融支援機構の融資対象に追加されます。要は大家さんの物件を改修するときに融資を受けられるということですが、これが本質的に何を意味するかは理解不足です。推測ですが、国が指定する支援機構なので、民間より金利が安いなど(つまり、改修費用の返済が楽になる。長期ローンで組める。つまり、返済金額もゆるゆると返せる)でしょうか。

改修等の支援としては、図として、手すりなどの設置や床を二重にする二重床の設置などが書かれています。また、要配慮者と賃貸人の関係では、居住支援協議会等による入居円滑化と書かれていますが、具体的に何かは不明です。

平成29年予算案としては、それらの要配慮者向けの登録住宅であれば、改修費を国・地方公共団体が補助する、地域に応じて家賃債務保証料や家賃低廉化に対して国・地方公共団体が補助となり、要は予算は補助費用がメインとなっています。

住宅確保要配慮者の入居円滑化に関する措置

上で説明がないと言っていますが、こちらで説明されていました。

居住支援法人による入居相談・援助

これは2つあります。1つは居住支援協議会の活動の中核となる居住支援法人(NPO等)を都道府県が指定する。居住支援協議会なるものを多分この制度を実施していくために作るのかなと思います。そして、そのメインにNPO等が挙げられるわけですが、その法人は都道府県が指定する形になります。

もう1つは、同法人による登録住宅の情報提供、入居相談その他の援助となります。ここからいえるのは、居住支援法人というものがNPO等で構成され、それらが要配慮者の入居サポート、または大家さんと要配慮者をつなぐ形になります。

おそらくですが、例えば一人親世帯の社会課題に対して解決を目指すNPOなどがあるわけですから、それらが居住支援法人となっていくだろうと想定されます。

家賃債務保証の円滑化

適正に家賃債務保証を行う業者について、情報提供を行うとともに、JHFの保険引き受けの対象に追加とあります。JHFとは、住宅金融支援機構のことです。また、居住支援法人による家賃債務保証の実施ということで、サポートする法人が保証することで円滑化ということになるようです。

生活保護受給者の住宅扶助費等について代理納付を推進とありますが、代理納付とは本人が賃貸人に支払うべき家賃等を保護の実施機関が直接支払うことのようです。要は支援法人が間に入ってそこからもらうのであれば、安心みたいなところでしょうか。

こちらも平成29年予算案として、居住支援協議会渡欧による円滑な入居等を図るための活動に、国が補助とあります。

右のグラフでは、居住支援協議会による支援の強化ということで、不動産団体、居住に係る支援を行う団体、地方自治体などが挙げられています。協議会はこれらの団体によって構成されるといえます。また、役割としては、住宅情報の提供、相談の実施、見守りサービスの紹介などとなります。

不動産団体とは、宅建業者や賃貸住宅管理業者、家主などを指します。また居住に係る支援を行う団体とは、居住支援法人、社会福祉法人等となります。地方自治体は、住宅部局や福祉部局などになるようです。

目標・効果

この法案は、要配慮者の住生活の安定の確保と向上を狙っています。

具体的には、数字目標として、

登録住宅の登録戸数は0戸から始まり、2020年度末で、年間5万戸ペースで増やし、17.5万を目指す。

居住支援協議会に参画する市区町村+自ら設立する市区町村の合計割合を39%から80%へ。

これは、2016年11月では、参画市区町村が669で設立は17だそうです。それを、80%つまり、1393市区町村以上に持っていくということになります。これも2020年度末となっています。ちなみに、全国の市区町村は1,741です。

法案の効果はどの程度あるか

実際に空き家活用としては面白いと思います。空き家として耐震性あり+1km以内というのは180万くらいあるので、登録物件はこの1割程度を目指すといえそうです。冷静に見ると、いつも言われるのは「空き家820万」が問題でなく、何かしら問題を抱えて対応ができない、または特定空き家といわれるような老朽化や問題を起こしているものだったりします。

要するに、820万の中で、賃貸用の住宅429万戸は市場性があり、「空き家」というイメージとはずれています。だから記事ページでは「民間の空き家・空き室」と、空き室と書かれているのでしょう。賃貸マンションは空き家より、空き室というのが適切なイメージだからです。その中で、使えそうな137万に対して、大家さんが「登録制度に登録したい」という人が1割あるかどうか。これは0か1というのでなく、登録する人がいそうかというところが鍵になりそうです。

また、その他の住宅318万のうち、同条件の48万は、現状市場性がないため、ここらの物件を登録できるかは疑問です。どうしようもなくてあきらめているとか活用できないケースが多いのかもしれませんし、ちょっとこのあたりは想像しか出来ません。

大家さんが「登録したい」という心理としては、改修費用の補助、保証料や家賃低廉への補助なので、実質的に補助費用目的となります。これらも、自分の所有物件を貸そうとする意識が高い人でなければ、つまりプロ意識がある賃貸人というと極端ですが、そういう方でないとやらないでしょうし、そもそも条件を検討することもなさそうです。よって、うまくプロ大家が空室対策で使うか、それらの制度の登録が手間でなければ民間管理会社や不動産会社も案内するかもしれないというところですが、これらの市場性とNPOなどは非常に相性が悪い気がするので、実質機能不全になる確率も高いとみています。

仮にこれらのプロ大家が活用して一定数の登録住宅ができても、おそらく「空室」率を下げることになりますが、「空き家」、つまり戸建などの空き家の有効活用にはなりづらいのかなと思います。もっとも、戸建賃貸自体の数が少ないので、「賃貸住宅」とはいってるだけで、とくに建物形状までは限定されていません。

一方で、当然要配慮者の方にはセーフティーネットとなるので使っていけるわけですが、そもそも賃貸人である大家または支援法人などのNPOがどう出るか。このあたりの動きで決まりそうです。個人的には年5万は厳しく、年1万程度登録されるが、多くの人は制度自体を知らないのと、そもそも大家メリットはある程度あるが不動産団体におけるメリットが薄い(キックバックをするのか、コンサルが増えるのか分かりませんが)気がするので、そんなちまちましたことはやらないという人が多数なのかもしれません。

おわりに

本制度は一見良さそうですし、住宅確保要配慮者などにとってはセーフティーネットとなるため悪い話ではありません。空き家の活用というのも時代の流れにあっています。ただ、実際に制度として回って動くかは疑問というところです。

空き家自体の活用というのは、アイデアレベルではいろいろ言えるのですが、制度レベルやそれらを実践レベルで有効活用となると、すぐにできるものではないと考えています。国のこういった制度がうまく空き家活用の意識や実践と結びついていくといいですね。

また今後もこの空き家活用制度はウォッチしていきたいと思います。

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