国交省が先駆的空き家対策モデル事業を開始していた

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国交省が平成28年度事業として、先駆的空き家対策モデル事業というのをやっています。

公募が4月から5月で、全体予算額は1億2千万円、応募団体は59件あり、採択団体は20件のようです。こちらの先駆的空き家対策モデル事業が気になったので調べてみました。

先駆的空き家対策モデル事業とは

ざっくりいえば、国が先駆的だ思われる事業に予算補助を出すのでやってね、それでその事業成果は市区町村へ展開させてね、というものです。

空き家対策に王道があるかないかは分かりませんが、少なくとも作り放題作ってそのままであれば空き家になることは至極当然です。そういう意味では何か対策に走るべきですが、中古市場を外国並みにして充実させていこうとか、空き家特措法などで市区町村の対策を円滑にしようなどとまあやっているわけですが、すぐに効果があるものはないといっていいでしょう。

先駆的というのは、いわば特区的に実験や良いやり方がないかという探りなのでしょうが、今更というか今になってなぜという感もぬぐえません。

採択された20団体はどういう事業か?

報道資料発表から、PDFで閲覧が出来ます。

 

参考部分にもありますが、地方公共団体、民間企業、その他(NPO、社団法人等)で、それぞれ採択団体は6,2,12となっています。民間が少ないのはまちづくり的でありビジネス的な見返りが少ないのか、合わないのが多いからでしょうか。地方公共団体の感覚は分かりませんが、その他のNPO等が多く採択されている印象ですね。

では、20と少し多いですが、気になったので見ていきましょう。

まずは民間企業の2団体です。

民間企業2団体

株式会社ゼンリン

「現地調査における調査項目・基準と、現地調査結果を踏まえた利活用方法の検討業務」となっています。ゼンリンといえば、ブルーマップをはじめ地図業界ではガリバー的な印象です。取り組みとしては、「空家法に基づく「空家等」に該当する建物を判別するための外観の客観的判断基準の作成」「上記基準に基づく外観調査の実施および既存の調査結果との比較、検討」となっています。

要はゼンリンが自分でやってる空き家調査のノウハウやまたはそれらをまとめて、現地調査で使えそうな判断基準を作るよ、あとはそういう基準を使って調査と今までの調査と比較して有効性をチェックするよ、みたいなことかなと思います。ゼンリンらしいといえばゼンリンらしいというか、空き家調査をやっており、かつ地図会社の強みを活かしたといえそうです。

上記記事では、

同社では、昨年4月~今年3月にかけて、自治体から104件の依頼を受け、空き家調査を実施。今回手掛けるのは、空き家に対する統一的な調査項目・判断基準作りと活用方法のパターン化だ。

(上記サイトより引用)

とあり、なんと1年度で、1800程度全国には自治体があると思いますが、100件もの依頼を受けて空き家調査をしているそうです。ものすごい数をさばけるのはさすがとしか言いようがありません。

ゼンリンにとっては空き家調査基準を作ることである種のデファクトスタンダードとなり、その基準で今後は空き家調査が行われるといって過言ではないはずです。他に良いものを作れるプレイヤーや実績や信頼があるところがあるかどうかなだけですね。

民間では普通であるコスト面を意識して、タブレットを使って作業時間を減らしていくなどのやり方も検討。とはいえ、利活用はパターン化したり何かしても簡単ではないと思うので、一番の成果は空き家調査における基準が統一化されるというところでしょうか。

最近では事業構想に北海道自治体との取り組みが紹介されていました。

 

有限会社 ユニバーサル・ツアー

「空き家を流通できる状態にする事業、空き家管理の必要性を周知する事業」ということで内容としては、「空き家を、その借り主が空き家内に放置された私物の整理を条件としたうえで低廉な家賃で貸
し出す試行的取組の実施及び、そのマニュアル等の作成」「上記取組を市町村と連携して行い、空き家の流通を図る」となっています。

会社は空き家管理事業部があり、それらの事業だけでなく、「空き家の流通」や「管理の必要性を周知」しないと空き家管理も伸びないという見立てかなと考えられます。

空き家の流通とは、安い賃貸価格で成立するかということですね。周知には触れられていませんが、市町村と連携して信頼性を確保しつつ、管理の必要性も周知というところでしょうか。単に仲介やお知らせであれば市町村の空き家バンクをみて分かるように成功することはほぼないので、民間の仲介技術のほうが高いと考えています。

 

しっかりと、国交省の当モデル事業ということで資料がありますね。

空き家オーナー向けのモデル事業としては、自分の私物があっても部屋を空けたら貸せますよというものです。それらを学生さんに住んで貰いつつ、オーナーの私物を分別するということですね。面白いですね。

 

次に入居者向け、つまり上の物件に学生さん向けに募集をしています。

 

学生さんは月1回3時間程度はオーナーの私物を分別しないといけないわけですが、その分安価で住めますね。というか1万2千円は破格ですね。

もう1つはマニュアルの作成や整備という点でしょうか、空き家管理マニュアルについてのモニターを募集されています。どちらかというと空き家管理マニュアルの配布で周知となるかはなかなか厳しそうですが(例えば民間の空き家管理会社は顧客獲得のために管理マニュアルをレベルの差はあれお客さん見込みには配るため)、配り方を色々と変えることで一定の成果は得られるかもしれませんね。

 

 

以上が、民間2社のモデル事業でした。

地方公共団体6市区町村

次に地方公共団体、市区町村ですね、自治体の採択モデル企業について見ていきましょう。

自治体としては、

川口市、京都市、小諸市、名張市、東近江市、福津市の6市となります。

一つずつ見ていきましょう。

川口市

川口市は「所有者不明等の空き家の解消に向けた財産管理人制度活用モデル事業」として、「所有者が不明な空き家の対応を進めるため、市が利害関係人となって財産管理制度を活用するマニュアルの作成」とあります。所有者不明の空き家をどうにかしたい、または川口市はそれが多いのか分かりませんがそのために手を打つということですね。財産管理人は例えば戸籍等で所有者が分かってもその人がどこにいるか所在が分からないなどの場合の最終手段のようです。その場合、家庭裁判所が命じることができるというもののようです。

空き家自体は固定資産税台帳等とのひも付けで所有者特定が容易となったわけですが、とはいえ所有者不明が0になるわけではないでしょうから、そのあたりの対策というところでしょうか。興味深いですね。

京都市

京都市は「専門家団体と連携した特定空き家等に関する調査等」として、「空き家についての指導等を迅速化するため、特定空家等の判断基準の作成」「権利関係が複雑な空き家の所有者調査の実施、検討」とあります。

特定空き家の判断基準というのは概ね出来ているはずなので、専門家団体との連携というのが大きい感じがします。市区町村の担当者だけで全て判断というのも怖いわけで。権利関係が複雑な空き家というのも、一筋縄ではいかないという意味では踏み込んで空き家対策や現場の課題があるからこそ言える部分でしょうね。

感覚的なものですが京都市は空き家対策は力を入れている印象ですね。

小諸市

小諸市は「小諸市空家等対策事業」として、「真に相続人が不存在であるか否かの調査方法の検討」「特定空家等の判断基準(景観を損なっている状態、危険な状態)の検討」となっています。

相続人がいるかどうかの確認方法が一体何かは分からないですがそれらの検討ということですね。特定空き家の判断基準もまた決めていかないといけないということでしょうね。

 

名張市

名張市は「地区別空家等特性の分析結果を用いた空家等の流通活性化促進事業」として、「空き家の流通活性化のため、ビッグデータ等を用いた空き家の地区特性分析や人口動向等を考慮した 10 年後の空き家発生予測の実施」とあります。

10年後という今後の予測をしていくというのがユニークですね。ビッグデータ等を用いるのは簡単ではないため、これは非常に興味深い取り組みだと思います。

こちらの記事でも、名張市について触れられていますね。

 

東近江市

東近江市は「先駆的空き家対策モデル事業」として、「周辺に悪影響を及ぼす空き家に対する行政代執行を実施した後の費用回収方法の検討 」とあります。

行政代執行をすることはできますが、結構執行後の費用回収を所有者にできるだけであって、請求したものが支払われるかとは別です。このあたりが色々と面倒なんでしょう。そういう意味で「費用回収方法」をどうするかというのが課題というわけですね。

 

福津市

福津市は「法務と連携した所有者特定スピードアップ事業」として、「所有者や相続人の特定を効率的に行うためのマニュアル作成(空き家の所有者特定等が難航している案件の司法的解決手法の検討) 」とあります。

マニュアル作成による効率化かもしれませんが、とくに特定が難航している案件に対して法務と連携してもっとスピードアップできないかということを考えているわけですね。裁判もそうですけど、開始から何年もかかるのがザラなわけで、そのあたりかもしれません。

以上6市の取り組みはベーシックな取り組みというよりも、ちょっと突っ込んだりひねったものがあり市区町村のモデル事業とはいえ面白いものという印象です。

NPO、社団法人等その他の団体12

最後に一番多いNPOや社団法人等の事業を見ていきましょう。

一般社団法人IORI倶楽部

一般社団法人IORI倶楽部は、「福島県全域を対象とした官民が広域連携で運用する空き家情報サイトの構築」とあります。広域連携が何かはよく分からないのですが、官民連携の空き家情報サイトがどうなるかは見応えはありますね。こういうものは民間企業が手を出しづらいので社団法人っぽさが出ていますね。

一般社団法人岡山住まいと暮らしの相談センター

一般社団法人岡山住まいと暮らしの相談センターは、「先駆的空き家対策モデル事業 」となっていて事業名からは詳細は不明です。さらに取り組みとしては、「空き家の調査結果の整理・活用(民間、町内会、行政の空き家調査結果の摺り合わせ、個人情
報の取扱いにおける法的問題点の整理)」「町内会などによる信託を活用した空き家の管理・処分方法の検討」「財産管理制度の活用基準の検討」とあります。空き家の調査はノーマルですが、2つ目の町内会などの信託による管理処分はあまり聞いたことがありません。財産管理制度もやはり上がってくるんですね。

公益財団法人鹿児島県住宅・建築総合センター

公益財団法人鹿児島県住宅・建築総合センターは、「かごしま空き家対策強化推進事業 -地域課題に応じた具体的取組方策の検討-」とあります。取り組みとしては、「市街地と中山間地域での特定空家等(※2)の判断のあり方を検討し、モデル基準の作成」「空き家の解体・活用を進める上での権利関係の整理、内部動産の処分方法等の検討」となっています。確かに市街地と中山間地域では特定空き家の意味合いが異なる気がします。少しずれているかもしれませんが、同レベルの特定空き家があったとしても、市街地では問題になるが中山間地域では問題にならないというのがありそうです。単位中山間地域には人がいないためですね。

 

神奈川県居住支援協議会

神奈川県居住支援協議会は、「空き家調査・利活用等マニュアル策定事業」として、「特定空家等(※2)の定量的な判断基準、所有者特定の手法検討、内部動産の処分・管理の手法について、地方公共団体や多数の事業者等と連携した検討」とあります。多数の事業者等との連携が気になるところですね。

特定非営利活動法人空き家コンシェルジュ

特定非営利活動法人空き家コンシェルジュは、「中山間地域における所有者不明空家等の管理運用基準と適性管理の仕組みづくり 」として、「中山間部の所有者不明空き家の管理等の基準(財産管理人(※1)、市町村への寄附等)の作成」とあります。こちらも中山間地域についての取り組みとなりますね。市町村への寄附等というのも気になりますね。市町村はもらってくれるんでしょうか。

一般財団法人島根県建築住宅センター

一般財団法人島根県建築住宅センターは、松江市における「空家対策推進研究プロジェクト」として、「特定空家等(※2)の判断基準(対応の緊急度、接道状況等を考慮)の検討」「空き家データベースで行政が管理すべき情報の範囲、公開すべき情報等の検討」としています。空き家データベースでどこまで行政が管理するか、公開すべきかは確かに課題となりそうですね。

一般財団法人下川町ふるさと開発振興公社

一般財団法人下川町ふるさと開発振興公社は、「小規模農山村空き家流通基盤構築事業」として、「空き家活用について、改修費用や効果等の明確化による事業化の可能性検討」「豪雪地帯である下川町の実情に応じた特定空家等(※2)の判断基準の作成」とあります。空き家活用自体結局事業的に成立するのみたいな部分は開発公社っぽい視点な気がします。あと、豪雪地帯での特定空き家というのは例えば家の倒壊などとも直結するわけでそのあたりはまた違う基準となりそうですね。こう考えると地域によって特定空き家基準が違って当たり前といえそうですね。

高岡市空き家活用推進協議会

高岡市空き家活用推進協議会は「市民・民間主導による「第三の空き家」の市場化に向けた情報プラットフォームの構築」となっていて、「活用可能だが取り扱いづらく流通しない空き家の活用方法や事業スキームの検討」「自治会や地区住民と連携した空き家の詳細な実態(立地状況、所有者の意向)を把握するための調査方法の検討及び、行政と連携して収集した情報の取扱い方針」となっています。前者の取り組みは空き家活用の方法検討ですが、結構難しそうです。単に空き家登録してもらえればいいわけでもないでしょうし、またそれらのマッチングや仕組みが課題ですね。

東京大学空間情報科学研究センター

東京大学空間情報科学研究センターは、「オープンソースツールの活用による安価に空き家の分布と状態を収集・蓄積・活用する手法の確立」とあり、他とは違い技術的な視点、ソフトウェアとくにオープンソースを使ったものでユニークですね。取り組みとしては「低コストな空き家調査手法の確立」「上記のデータを効果的な空き家対策につなげるための活用手法の検討」とあります。オープンソースを使えば低コストで調査が出来る可能性があるというのがメインでしょう。例えば調査に追加データベースシステムやGIS等のオープンソースを使うなどが考えられますね。コストが削減出来れば調査も円滑に出来るかもしれませんね。

徳島県住宅供給公社

徳島県住宅供給公社は、「徳島県空き家対策加速化事業」として「徳島県が認定する空き家判定士が統一的な視点で空き家調査をするためのマニュアルの作成」「特定空家等(※2)に対する勧告等の措置をする際の猶予期限の設定方法の検討」とあります。空き家判定士は本ブログでもまだ取り上げてない気がするのでまた別途調べてみます。県での動きが加速しそうですね。

NPO法人兵庫空き家相談センター

NPO法人兵庫空き家相談センターは、「法務や不動産の専門家ネットワークによるワンストップ空き家対策」として「空家法に規定する「空家等」「特定空家等(※2)」の判断基準マニュアルの作成」「空き家発生の未然防止のための相続前後における対応マニュアル作成(成年後見制度、生前整理、遠隔地に居住する所有者への適正管理促進、家財道具の処分)の作成」となっています。後者の取り組みの未然防止という観点はグッドですね。

大和・町屋バンクネットワーク協議会

大和・町屋バンクネットワーク協議会は、「自己管理が困難な所有者等の適正管理支援仕組み」として、「福祉施設等入居等により自己管理ができない空き家所有者等の適正管理手法の提案作成」「地域特性を踏まえた空家管理マニュアル作成」となっています。老人ホーム等に入った入居者が空いた自分の家をどうするかについてはあまり言及がないようですが多くのケースであるわけなので、大事な課題ですね。それは、入居者にとっても、行政にとっても、そして老人ホームなどの福祉施設側などにとっても、それぞれ解決すればハッピーになります。福祉施設側からすれば空き家管理や空き家についての処分や活用を提案してくれるのは付加価値があがりそうですね。

以上少し多かったですが、12団体を見てきました。

まとめ

本モデル事業は6月以降から順次行われており、今後の情報展開や共有が面白そうです。それぞれのモデル事業には注目していきたいところですね。事業の経過やプレスリリースや事業報告等もキャッチしていきたいと思います。

全体的にはユニークな取り組みもありつつ、また空き家特措法が制定されて各地で動いた結果色々な課題が見えるにようになったのでさらに地域や現場を踏まえたものが多くあるという印象です。

ここのモデル事業にエントリーしたり、または採択されているということは空き家対策に力を入れているとも言えるわけで、そういう自治体にも要注目といえそうですね。

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