長野市の「空き家管理事業者登録・紹介制度」を調べてみた

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長野市が空き家対策として、新制度を作ったようです。空き家管理事業者登録・紹介制度と名付けられたものが興味深いので、どんな制度が調べてみました。ソースは、空き家に管理者登録制 長野市が対策、事業者紹介 からです。

長野市の空き家管理事業者登録・紹介制度とは

簡単にいえば、長野市が市内にある空き家管理事業者を登録できる制度です。その登録した事業者に対して、空き家所有者等から管理をして欲しいなどの問い合わせを仲介するイメージです。

ぱっと見は、事業者側がメリットがあるだけで、所有者側のメリットはそこまでなさそうですが、本当にそうなのか資料を見てみました。

空き家管理事業者登録・紹介制度の中身

空き家管理事業者登録・紹介制度を創設しましたに詳細が書かれています。制度概要のPDFを見てみます。

平成29年3月で、市内の空き家は8,063棟あり、空き家率は4.8%となっています。また、8,063棟のうち、7,000棟は利用可能な状態で、ほぼ9割が使える空き家ということがわかっているようです。ちなみに、現状では使えないという不可能な空き家は279棟で3.5%となっています。先回別の市区町村で長野市とは関係ないですが、特定空き家など危険な空き家はどれくらいあるかを考えました。それらは1割に満たないのではないかと想定していましたが、おそらく特定空き家候補はC,Dランクで1割程度、件数は900件で、そのうちDランク279件のうち、まずいものがどれくらいあるかという感覚値になりそうです。

これらのデータは市区町村で異なるものの、使える空き家がどの程度あるかはわかりませんが、使えない空き家の割合は概ねこの程度ではないかという参考データになります。

空き家管理の課題

3者視点でそれぞれの課題がまとめられています。

空き家所有者にとっては、現状のまま管理をする人が多いが、長野市ではない遠方に住んでいたり、年齢的や体力的な面で相談窓口を求めている人が多いということです。また、家財の整理やリフォームを必要としている人が多いといえます。これらの各課題や回答者の細かな点は省きますが、空き家実態調査自体はこちらで確認が出来ます。第3回長野市空家等対策計画作成協議会

周辺住民にとっては、空き家によって生活環境悪化や防火防犯の不安があるということです。

最後に長野市にとっては、空き家管理ビジネス事業者の状況を把握できてないことや、市民から対応を求められても空き家所有者の特定まで時間がかかることが課題となっています。

冒頭で所有者にとってのメリットが薄いと書きましたが、実際は相談窓口を求めているということやどこに相談していいかわからないという人もいるため、そのため窓口を兼ねた本制度は意義があるということになりそうですね。

事業者登録・紹介の狙い

資料ではP.6になりますが、目的としては2つです。1つは、空き家管理事業者の把握です。市はそれらを把握できてなかったのですからこれは当然です。

もう1つは、空き家所有者に対する管理事業者情報の提供です。課題でもありますが、空き家所有者が管理を望む場合、事業者を紹介できなかったけれど、市が認定するものなら出来るよということですね。

これではただの紹介制度ですので、もう一歩踏み込んだのがP.7の情報共有です。空き家管理情報を長野市と自治会との間で共有し、緊急時に空き家管理者に対し連絡が出来るという仕組みです。

空き家管理情報とは

一見したとき勘違いしてたのですが、空き家所有者情報など個人情報を提供すると思っていました。例えば空き家所有者の住所や連絡先です。ただ冷静に考えると自治体にこれらの情報を提供するのは自治体側のリスクでしかなく、しかもこれらを扱うならば理由が必要です。

つまり、ここから考えられるのは、「空き家管理情報」とは、資料にあるような「管理者情報」として、空き家所有者自らやっているのか、事業者側が管理しているのかということ。また管理されている内容は何なのか、点検か、草刈なのか、それともどういう内容があるか。また管理者等の緊急連絡先はどこか、これは自己なら管理者個人情報になりますが、事業者なら事業者の連絡先となります。

これらの管理情報を市が自治会と共有することで、自治会からの緊急連絡に対応したり、自治会から直接空き家管理者等(等とあるのは、空き家所有者か空き家管理事業者かを含むからでしょう)に連絡出来るということになります。

逆にいえば緊急時以外は連絡をすることはないわけですし、また当然これらは空き家所有者が情報提供を同意の元で行われることとなります。

ここで疑問が出てきます。そもそも所有者は情報提供に同意するのかです。これについてはメリットは分からないので、あえて同意する人がいるのかという疑問が浮かびました。そして、情報提供に同意する場合の書類とは、こちらの書類です。空き家管理に関する情報提供同意書これは管理事業者側へお願いして、所有者から同意を取れるかどうかとなります。つまりお願いであり同意がなければ緊急連絡は出来ません。

一見したところという勘違いかもしれないと書きましたが、長野市側が管理情報=個人情報を取り扱うというのは図的には正しい気がします。長野市は扱うけど、提供同意するなら自治会区長に出すよということですからね。

事業者側のメリット

長野市にとっては、緊急連絡体制が出来たり、空き家管理事業者が把握できたり、窓口相談から仲介情報を出せるなどして良いことはあります。

所有者にとっては、市の認定事業者がいるから安心して管理を頼めるということがあります。

では、事業者にとってのメリットはどこにあるでしょうか?

1つは、空き家所有者等からの要望などから事業者を紹介してくれるため、受注数が増える可能性があります。これがあるから事業者は登録をするのではないかなと考えられます。

その紹介の仕方はホームページ等とありますが、空き家管理事業者を紹介しますにてリストで紹介されています。当然ですが、管理事業者サービスを保証するわけではないため、所有者は市の紹介だからと安心せず普通にサービスを見極めてもらう必要があります(逆にいえば、安心出来る管理事業者の紹介というのはニーズがあるのではないかと考えられますね)。

平成30年4月23日現在とかかれた事業者リストは、14事業者が登録されています。

再度、要綱を読み込む

ここまで本制度の概要はなんとなく把握できましたが、2点ほど気になる点が出てきました。

1つは、空き家所有者のメリットが相談窓口でとくに空き家管理をしてくれる会社を紹介してくれる紹介リストがあることになります。ですが、同意書がなければ情報共有はされないため、市にとっては緊急連絡をするほど仕組み化できないのではないかという点です。どこまで情報提供するかをもう一度確認してみます。

2点目は、所有者がなぜ同意書に同意するかです。感覚が人により異なりますが、私ならあえて空き家情報を渡すことはないと考えました。市が自治会と共有するからといってなにか良いことがあるかというと、例えば緊急時とはなにかとなります。図では窓ガラスが割れたり、落書きや不法投棄など管理不全に関することですが、それがあればすぐに連絡が来るということですね。管理がより強化されるという意味では良いのかなという感じです。

要綱をきちんと見ていなかったので、概要PDFでなく、長野市空き家管理事業者登録・紹介制度実施要綱を読んでみます。

これによれば、第8項に情報提供のことが書かれています。

(空き家に関する情報提供)
第8 市長は、空き家の所有者等から、空き家管理に関する情報提供同意書(様式第7号。以下「同意書」という。)の提出を受けた場合は、同意書に掲げる項目について、その空き家が所在する行政連絡区の区長又はその集落を代表する者(以下「区長等」という。)に情報を提供するものとする。

2 区長等は、前項の規定により情報の提供があった空き家について、維持管理が必要であると認めるときは、空き家管理事業者又は市長に対して連絡を行うことができる。

同意書によって、自治会区長に情報が提供できるのはもちろんですが、第8の2では、自治会の区長等は空き家維持管理が必要だなと考えられる場合は、空き家事業者か市長に連絡が出来るとあります。これは、どちらかといえば周辺住民や自治会にとってのメリットかもしれません。

こうすれば、自治エリアにおいて空き家管理不全があったり緊急時に管理事業者に連絡するか、市長に言えるからですね。また、同意書とは管理事業者ありの想定をしていましたが、同意書では「管理事業者による管理がなし」というチェックも出来ます。つまり、所有者が自己管理をしている場合でも自治会区長への情報提供同意が出来ます。

個人情報のくだりは、第10項にかかれていて、事業者はもちろんですが自治会区長の管理も求められることになります。

懸念事項は、同意書が集まらないことか

要綱自体は3ページで短いのですが、ここまでで考えられるのは思ったより同意書が集まらないという点です。同意書提供によってメリットとしてはより空き家管理が強化されるのですが、同時に煩わしさも感じられるでしょう。管理事業者に任せていれば同意書くらいいいかとなりますが、自己管理ならより面倒と感じるかもしれません。しかし自己管理を強化する意味で同意書にサインする方は立派な空き家管理者という感じもします。このあたりどうなるか注目ですね。(ここでいう面倒とは、何か不全があればすぐ連絡がくるため、管理事業者に再度対応してもらうなどのサービス強化だったり、自己管理であればすぐ対応しなければならないということです)

空き家所有者のメリットは、紹介制度においては事業者紹介をしてくれるというところがありますが、とはいえこれらの事業者との契約が保証されるわけではないためやや微妙です。全く分からないところより安心は出来るでしょうが。同意書においてはさらにメリットが薄いので上に書いた通り、市が想定するよりは同意書は集まらない=緊急連絡体制はそこまで出来ないと考えられます。

市としてはA,Bランクは適切に管理してもらって、C,Dランクは管理するか、特定空き家にならないようにしたいからです。管理さえできていればぶっちゃけ連絡先は不要ですから、このあたりがどこまで機能するかは分からないですね。現状連絡先が分からないから対応が手間取っているというところですが、あえて所有者が同意書に踏み出すかが疑問ということです。あえてやる人は少ないのではないかという懸念があります。

おわりに

自治体の空き家対策という試みとしてどういうものかと興味をもって調べてみました。自治体にとってはメリットは大きいですし、周辺住民にとってのメリットもありそうです。ただ、所有者にとっては相談する際に、管理事業者がわかる程度であり、それで管理が進めばやったほうがいい制度ですしあったほうがいい制度となります。

制度が出来て、実際の空き家管理が進むかどうかが鍵となりそうです。周辺住民にとってのメリットは当然自治会区長や自治体側に通報することで、適切な管理を空き家所有者に連絡出来るということになりますが、情報共有では同意書がなければそこはできないので機能不全の可能性もありますし、集まらないなら周辺住民のクレームに対して従来どおり時間をかけて所有者を特定するということになってしまいます。

今後の動きに注目していきたいですね。

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3.既存および建築中ホテル(P.6-7)

4.所有権の異動(売買および相続)(P.8-9)

5.投資法人が所有する建物(P.10)

6.名古屋市中心部の状況(P.11)

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