住宅確保要配慮者向けのセーフティネット住宅件数は半年で622件だった

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住宅確保要配慮者向けの国交省制度が新設されて時間が経っています。本ブログでも、2017年2月では国交省の住宅確保要配慮者への空き家活用制度について調べてみたで細かく見て、その後2017年11月に住宅確保要配慮者向け賃貸住宅の登録制度が始まっていますで少ししらべています。

当初、17.5万を2020年度末に掲げている目標がどの程度の感覚かわかりませんでしたが、「断らない賃貸」広がらず 高齢者支援策、家主にリスクによれば目標値の0.4%となっているため、厳しい印象です。同記事から何が広がらないかを調べてみたいと思います。

住宅確保要配慮者向けの賃貸住宅登録制度とは

再掲ですが、ここでいう住宅確保要配慮者とは、低所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯などです。(法律的な定義)

セーフティネット住宅サイトの登録数は?

住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅専用の検索・閲覧サイトであるセーフティネット住宅は、622戸の登録で登録件数としては81件となります。

このサイトは2017年10月20日に開設で、1ヶ月後には登録数0でした。制度の登録などの手続きや認知がまだまだということでしたが、現在半年経って622戸ということで、17万5千を2020年度の目標値とすると、確かに0.36%となり、約0.4%の低水準です。

この17万5千という数字の設定に関して言えば、180万戸程度が耐震性がある空き家がありかつ1km以内(駅からだったはず)だから、それらの1割程度約18万は使えるよねという算出でしょう。

一方で、年間5万戸のペースで登録されるよう仕掛けていくわけですが、半年であれば半分はいかなくても、1万戸程度、つまり2割くらいはないとつらい。いや、1割でもいい。5000戸くらい。しかし、実際は622戸と大きく下回るイメージです。

居住支援法人の数

ここで居住支援法人というのを見かけたので、それについて調べてみましあT。

居住支援法人とは何かですが、住宅セーフティネット法に基づいて居住支援を行う法人で都道府県が指定するものです。国交省資料に居住支援法人の概要がありますが、NPO法人や一般社団法人などで、業務は本登録住宅入居者への家賃債務保証であったり、その入居者への相談業務などですね。要するに、本登録制度の支援を行うために都道府県から指定された法人と考えれば良さそうです。

正確には都道府県知事が申請のあった居住支援法人に対して指定する形となり、補助金などの支援は単年度あたり1000万円が限度で、100%の補助となります。ただし、入居相談は300万円までと活動内容に応じた上限額は決まっています。またこれらの予算総額は4.5億円となり単純に考えると、47都道府県で4.5億ですから、1都道府県1000万程度という規模になりそうですね。

逆に言えば都道府県知事から指定されてない法人はこの制度活用が出来ないわけですから、居住支援法人の数を調べればどの程度の規模になっているかがわかります。

セーフティネット住宅サイトの右サイドバーに、居住支援法人一覧ボタンがあり、PDF資料として団体リストがあります。ざっと見ると、

  • 北海道 2
  • 岩手県 1
  • 神奈川県 1
  • 福井県 1
  • 愛知県 3
  • 京都府 1
  • 大阪府 16
  • 兵庫県 3
  • 奈良県 1
  • 岡山県 1
  • 福岡県 10
  • 長崎県 1
  • 熊本県 3
  • 鹿児島県 1

となり、全体で45団体となります。

ただこの規模が何を示すかが分かるわけではないので、参考値ということで出てきたものです。

居住支援協議会の数

次に居住支援協議会というのもあります。居住支援協議会リストでは、72の協議会があります。都道府県や市区町村を中心にあります。この協議会は何かというと、居住支援業務の促進を図るために、地方公共団体、居住支援団体、不動産関係団体が連携とあります。要するに協会的なもので、主に不動産業界、自治体行政、社会福祉法人などのNPO業界が連携することになります。

こちらも平成30年度でこの仕組みを構築として6.5億円が予算化されているようです。こちらの居住支援協議会の概要のKPIが一瞬良くわからなかったのですが、全市区町村1,741のうち、40%が平成29年3月末時点となっていて、平成32年つまり2年後には80%にするというものです。この数は、この協議会に参画か設立かという自治体のようなので、当然設立でなく参画しているといえばその割合がぐっと増えそうです。同資料では設立したのは、全都道府県だそうですが、市区町村は23のみです。1741の4割とは、約680自治体ですが、このうちほとんどが参画となります。

この参画KPIが機能するかはご想像におかませしますが、意味があるとは言えないかもしれません。国交省からは都道府県には強いけれど、その先の現場である市区町村には参画が限界という実情かもしれません。

居住支援協議会の数は居住支援法人と同様、参考値にはならないかもしれません。

広がらない理由はどこにあるか

冒頭の記事では、自治体への事業意向で数十自治体しかないとあります。この意向アンケートデータは見つかりませんでしたが、その後にある自治体の財政難による家主への支援策が低調というのが気になりました。この制度は国が100%支援するものではないのかなと思っていたからです。

大家さん向けの住宅確保要配慮者受け入れハンドブックというのがあります。ここには、「一定の要件のもと改修費等への補助がうけられます。」とあり、入居者を要配慮者に限ることなどが必要とあります。

また住宅セーフティネット制度活用Q&A集という、241ページの資料がありそちらを見てみます。こちらは受け入れハンドブックの解説版となっているようです。とくにここでは、改修費補助に関連しそうな項目を見てみます。

第2章 住宅セーフティネット制度Q&Aでは、住宅確保要配慮者についてはさらに詳細があり、上で書いた5者は法律での位置づけですが、それ以外でも国庫幼少の省令である外国人等、また自治体の供給促進計画での海外からの引揚者なども対象となるようです。

具体的な登録住宅への経済的支援

同資料のP.39から説明がありました。ここを読み込んでいきます。

一定の要件がありつつも、3つの経済的支援があります。

1つは、国による改修費補助。2つ目に、改修費・家賃・家賃債務保証料の低廉化への補助、3つ目に、住宅金支援機構による改修費への融資です。

他に居住支援もありますがここでは省きます。経済的支援である補助金について今回は見てみます。

改修費補助は7つ

耐震改修、間取り変更、シェアハウスへの改修、バリアフリー改修、居住のために最低限認められた工事、居住支援協議会等が必要と認める工事、これらに係る調査設計計画の作成の7つです。

また限度額は、1戸あたり国費で50万円で、上記の耐震、間取り、シェアハウス変更を含む場合は、2倍の100万円になるようです。

補助に関しては2択で、国による直接補助か、国と自治体による補助のどちらかの補助となります。国による直接補助は、先程のものですが、1戸あたり50万円が限度で、工事費の3分の1となります。つまり、150万円までの工事で最大50万円が1戸の改修として補助されますから、負担額は150万円の工事で100万はあるということになります。

国と自治体による補助は、さらに同額ずつ増えます。つまり、国と自治体合わせて工事費の3分の2までで1戸あたり100万円が上限となります。これを見ると国の負担額と同様を自治体に求めていることになりますよね。

上の工事の具体的な内容も書かれているのでチェックしても面白いですが、ここでは省きます。

この時点で明らかなのは、今回の制度は国の直接補助だけなら自治体は負担館ゼロですが、自治体負担であれば同額の補助額を不安することになります。上で言えば150万円の工事をした場合100万の補助が出るうち自治体は50万の負担が必要です。

家賃低廉化への補助

こちらは家賃を下げて提供するときにその補助が受けられるものです。例えば家賃5万円が標準でも配慮者へは4万とするとき、1万を補助されるというイメージでいいでしょう。

実際には、低額所得者が入居する場合に負担を減らすために家賃を「通常の市場家賃よりも減額した」場合に、自治体が必要と認めた場合に減額分を補助とあります。自治体が認める必要もあるため、ややハードルが高い印象ですが、最大1戸あたり月4万円までとあります。

ちなみにここでいう低額所得者とは月収15.8万円以下で、生活保護制度などによる住宅扶助費や生活困窮者自立支援制度による住居確保給付金受給者などは対象となりません。

また自治体負担としては、最大4万円の場合、国が2万円で自治体が2万円で同負担ですね。

家賃債務保証料の低廉化への補助

ややこしいですがこちらは債務保証の低廉化です。国交省に登録している家賃債務保証業者が初回の保証料を下げた時に、減額分に対して最大6万円の補助が受けられます。こちらも同様に国と自治体で3万円ずつ最大となるため、自治体の負担となりかねません。

改修費への融資

ついでに融資についても調べてみます。こちらは改修費の補助対象である工事をするとき、8割を上限として、返済期間20年以内で固定金利で住宅金融支援事業による融資が受けられるというものです。

制約が厳しい

上の補助でとくに改修費の補助の場合(家賃低廉化や家賃債務保証、改修費の融資は対象にならないように考えられる)は、10年間は「要配慮者専用住宅」にする必要になります。

逆にいえば改修費補助をしたら10年は要配慮者向けの賃貸住宅としてねということです。また国からの直接補助だと、公営住宅並みの家賃が上限となり運用することが求められます。

当たり前ですが、改修費補助を受けたら10年間はそのまま維持ですので、登録住宅廃止は出来ないわけですね。改修費補助がなければ特段制限はないですが、実際は補助金または居住支援とセットと考えると、10年維持を考慮する必要が普通となりそうです。

名古屋市はどうなっているか

例えば名古屋市では、住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅(セーフティネット住宅)登録制度ということで説明があります。ただ現在愛知県のセーフティネット住宅は0件です。住宅確保要配慮者専用賃貸住宅所有者向けの募集・説明会(名古屋市)では、今月末に説明会があるようです。こちらの説明会の資料は公開されるようなので詳細はわかるようですね。

当然ですが、空き家改修費などでもそうですが、補助額の予算は限られるわけです。自治体が負担をするのは財政圧迫になりますし、このあたりどう折り合いがつけられるかということで、冒頭の記事にあった「財政難による支援低調」というのがやっと納得できました。

都道府県として例えば愛知県は、住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅(セーフティネット住宅)制度のように告知をしています。いつも感じますがこれを対象大家さんが見て一発でわかるかはかなり怪しいです。国や自治体が制度はじめたなあといってスルーしそうですよね。

住宅確保要配慮者あんしん居住推進事業というものがあった

調べていくと、そもそもこちらの「住宅確保要配慮者あんしん居住推進事業」と同様の事業だということが見えてきました。名前が変わっていますが、平成24年度から毎年あるようです。そして平成29年度版が今回の住宅確保要配慮者専用賃貸住宅改修事業となるわけですね。

調べていくと、面白いデータが見つかりました。

愛知県にある住宅確保要配慮者あんしん居住推進事業のデータです。これによると、高齢者世帯等の入居を拒まない民間賃貸住宅とあり、愛知県で検索すると平成24年度は990件、25年度には784件、26年度は658件が事業を実施した住宅のようです。あんしん住宅(拒まない住宅)専用の検索・閲覧サイトがその累計であり現在の最新値だと思われますが、愛知県は2196件となっています。この2196件には、平成27年や28年分も入っていると思われます。

あんしん住宅事業で、5年程度行った結果の累計が、約25000戸であるならば、年間5000戸程度が妥当だと考えられる(補助や対象の違いなどは考えないとする)ので、今回のセーフティネット住宅制度の目標値は相当高いと考えて良いでしょう。

ちなみに、年5000であったら、半年で2500程度が短絡的な目標値ですが、それが現時点で622戸なのでやはりまだまだ低調ということになります。

ところで素朴な疑問として、あんしん住宅情報提供システムとセーフティネット住宅サイトはほぼ同様で非常に無駄遣いのように思えますがこのあたりどうなっているのかが気になります。

また愛知県レベルでも、愛知県あんしん賃貸支援事業というのがあり、こちらは約120件程度の登録がExcelで確認できました。それぞれ微妙に違うのか主体事業者が違うから別事業なのかなんとも言えないところです。

大家視点でも登録が面倒そう

申請資料で圧倒されるのは添付資料の多さです。この手の制度は申請が大変となるとまず大家さんがやらないのではないかと思われます。もちろん仲介事業者はもっとコストに敏感と考えるとやる意義が薄くなりそうです。

労力をかけてもとくに得られるわけでなく相応の縛りがあるので大家側もボランティア精神がないと厳しい気がします。

それらを乗り越えた先にマッチングがどれほど行われるかのデータも欲しいところですよね。登録したらどの程度期待できるか。それらがないと、大家さんもですが、仲介事業者も動かないでしょう。

おわりに

今回、セーフティネット住宅で住宅確保要配慮者に向けて何か進んでいくと思われましたが、かなり寒い状況となりそうです。データがそれを物語っています。実

際には、入居者視点として対象者へのメリットはありますが、それ以外の立場へは、大家は改修費補助を受けられるが要件が固く厳しそうというのがあります。もちろん登録件数だけを見るわけにはいかないのですが、実際は大家さんが登録したいと思えないと制度という仕組み自体が機能しません。

今後もこのままいくと、低水準で例えば年間1000件程度となり、類似だと思われるあんしん住宅の水準を大きく下回ります。厳しい結果ですが、大家、不動産仲介事業者、自治体(市区町村)がそれぞれが負担をするが相応のメリットがあるなどの施策でないと今後も厳しいと考えられます。

またどのようになっていくか機会をみて調べてみたいと思います。

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