平成30年度空き家対策の担い手強化・連携モデル事業の成果実績を考える

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国交省が行っている空き家対策の担い手強化・連携モデル事業ですが、平成30年度版(本モデル事業第1回目)の成果が公開されていたので、見てみました。可能な限りコメントしています。

目次

空き家対策の担い手強化・連携モデル事業のソース

国交省サイトがソースとなります。

空き家対策の担い手強化・連携モデル事業

それぞれの団体毎に概要スライド1枚と、詳細な事業報告書が閲覧出来ます。

既に令和元年度が募集が終わり各採択事業者は事業を行っている段階です。先回ちらっと書いたところですが、そもそもその頃にはまだ平成30年度の実績がなかったように思えますが、それは気にせずみていきましょう。

部門は2つあり、面白みがあるのは全国共通課題の解決部門

私の主観に過ぎませんが、(1)人材育成と相談体制の整備はわりと管理や運営など文字通り「整備」ですので、そこまで目新しいものが打ち出しづらいイメージです。とはいえ、育成をおろそかにしてはいけないですし、相談体制が出来てないという場合にはやはり必要なのかなというところです。

以下それぞれの部門で面白そうなものをピックアップしてみます。

(1)人材育成と相談体制の整備

概要を閲覧していって、面白そうなものを取り上げてみました。何が特徴的か、気付きになりそうなところを書き出してみます。

35件ありますが、以下の5件を選んでみました。あくまで面白そうだという主観ですので。

  • 株式会社三友システムアプレイザル
  • 一般社団法人三好みらい創造推進協議会
  • 洛西NTアクションプログラム推進会議 住宅・拠点関係ワーキンググループ
  • 一般社団法人大阪府不動産コンサルティング協会
  • 北九州空き家管理活用協議会

の5つです。それぞれ見ていきましょう。

空き家対策業務支援・空き家調査員育成プロジェクト(株式会社三友システムアプレイザル)

空き家所有者がどうしていいか分からないということが空き家問題の一つではないかということで、空き家相談員(空き家体制)を育成していくプロジェクトです。この取組が特徴的だなと感じたのは、多くは既存専門家をつなぐとか、まとめるということであるような連携体制に終始してしまうのですが、これは「相談員」自体を育成しています。

もちろん、自治体、士業や専門家、窓口、空き家所有者などとの連携がいるわけですが、地域に相談出来る人(見極めなど)がいるだけで全く違ってくるでしょう。

成果としては、自治体の興味関心やその後の展開が期待される点に注目したいですね。

空き家トリアージとして、再利用可能から取り壊しが必要まで4段階に分けられるのですが、再利用可能が少なく、取り壊しが多いのか、自治体や地域により違いそうです。ただ実際に空き家がどうか以前に、空き家の状態や市場性を考えられる人がいないのが問題なので、そういう意味で有意義な取り組みと言えそうです。

空き家活用促進に関わる体制強化事業(一般社団法人 三好みらい創造推進協議会)

概要資料を見ると、見事に空き家総数→利用可能空き家→所有者特定空き家→接触可能空き家→内部調査空き家→交渉可能空き家→活用可能空き家という段階でどんどん減少していきます。

30戸程度のうち実際に空き家活用が出来たのは7戸となっているのですが、面白いなと思ったのはまず面談から内部調査のあたりで、次のアポ取りにおいて活用するかという点を主眼においた設計図やビジュアル図というのを用意していくというやり方です。

ビジネスにはなっていないという記載はあるものの、実際に実情やこちらの熱意を伝えていくと実は困っているという話になるのは、いかに対面や行動が大事ということを痛感出来ます。

逆にいえば、所有者自ら連絡したりどうにかして欲しいということから、どこかへ相談したけれど断られると次はアクションを動かしにくいのかなとも感じました。何度もトライしていって粘れるわけではないですからね。

洛西ニュータウンにおける住み替え促進を通じた空き家発生予防事業(洛西 NT アクションプログラム推進会議 住宅・拠点関係ワーキンググループ)

ニュータウンなど団地における空き家も大きく問題になっているのでその点と、空き家発生予防をどうするかに注目してみました。

空き家予防は住み替えハンドブックというテキスト作成になりそうです。ニュータウンにおける中古住宅の流通促進は、所有者が高齢期になってからも選択肢が広がるという意味合いが強そうです。

まちなか「空き家相談取次ぎ」連携促進事業(一般社団法人大阪府不動産コンサルティング協会)

相談等に来ない所有者にどうアプローチするかが興味深いと思い見てみました。実際には窓口拡大という点というが大きいようですね。

『オール北九州』で推進する空き家・留守宅対策事業(北九州空き家管理活用協議会)

この北九州での取り組みは、シニア世代を中心とした活動部隊が特徴的だと言えそうです。実際は学生もいたり面白そうですね。

セミナーや相談会などでざっくり相談者の1割が相談に、そのうち、3割が管理や活用案件として案件化されたということです。細かい数字は報告書を見てみてください。100参加者がいたら、10相談者がいて、3人は管理や活用の話になったということですね。割合では参加者の3%程度となりますが、これを動いて形にしていくパワーはすごいなと思いました。

課題としてあったのは、これらの活動は管理なら管理仕事になりえますが、調査だったり、提案企画だったり、実際のセミナーから相談が全てNPOベースで動いていると費用面できつそうです。大きな金額にはならないですが、活用面においてイベント開催やいわゆる賃料等が発生する場にした場合その1部を割り当てるとかはありかなと。このモデルはいわゆるサブリース型の改修賃貸モデルと同様です。

もちろんここで活用した物件やアイデアが収益となることになるわけですが、少数ではきついですが一定程度件数が出てくるといいのかもしれないですね。

以上5件をピックアップしてみました。

(2)全国共通課題の解決

こちらも同様ですが、全国共通課題というだけあってなかなかおもしろい切り口が多いです。

19件ありますが、面白いものがほとんどですが見ていきたいと思います。

空き家情報共有システム構築によるリノベーション促進事業(大台町)

大きく2つあって、1つは空き家情報システム自体がないのでそれを作ることで町役所での業務共有や遂行が捗ることでこれは成果として上がっています。

もう1つのリノベーション促進はあまり書かれてないのですが、町内の空き家自体で潜在的なものが多く、かつそのまま使えるのは限られるのだと考えられます。

そこで、空き家所有者への意見を聴きつつ、同時に移住したい人、一応設定は創業や起業をしつつなので一気に挑戦的になるのですが、そこでマッチした空き家をリノベーションしていくという流れを想定しているのだと思われます。

エンジョイワークスがサポートしているのでなるほどなあというところでした。

小学校区別空き家マップ作製事業(特定非営利活動法人かけがわランド・バンク)

GISの活用という点が面白そうかなと思ったのですが、報告書を見ると、実態調査という現状把握をするために行政の協力を得つつ(GISデータの提供)、NPO側で調査をしたというところです。GISソフトに手こずったという話があるのですが、たしかに慣れてないとビジュアルの地図と緯度経度を含めた各種データテーブルの連携イメージ、最も基本的なところではシェープファイルなどの慣れないファイルの扱いというところでしょうか。

オンライン版なら安価でいけるかなと思ったのですがおそらくデスクトップ版と現地で入力できるアプリ版の連携と考えると、デスクトップ版で情報データのセキュリティもあるとすると、ローカルでアプリもネイティブで使う(通信しない)ことが想定されます。GISソフト自体はSaasモデルもありますが、こういったセンシティブな情報であるとデスクトップ版になりそうです。定価は40万近くするので、NPOで買うソフトには高額ですね。

調査を進めていく中で、当事者意識的な意味で地域リーダー等を育てるというところはさすがに厳しかったようです。GISでの仕組みとマニュアル化できたという点で、一からやるとこうなるという良い事例にもなりそうです。

地域コミュニティによる空き家の利活用を促進するためのマニュアルの作成(特定非営利活動法人くらしまち継承機構)

マニュアル作成自体はどこまで有意義かは分からないのですが、コミュニティや地域コミュニティというのを主体としている点が面白い点です。

とはいえ、そもそも空き家活用というのは、一人の意見やアイデアや行動で全てが出来るということはなく、不動産という特性上物理的にも地域住民であったりの相互作用が必然的に起こります。それがすなわちコミュニティでもあると思うので、例えば地縁で昔から住んでいる人だけで構成されるコミュニティと移住してきたり若い世代が住むコミュニティは意味合いが異なります。

対立するというよりも、どうしていくのがいいかを考えるときにコミュニティとは、むしろ逆に対話が出来る関係性のほどほどの単位という程度であって、それをベースにするというのは意外に難しい印象を覚えました。

ここでは自治会などが一つのコミュニティですが、既に自治会がどこまで機能するか分からないところなのでそのあたりも課題になるかもしれないですね。

小さな町ならではのニーズ先取り・企画提案型空き家流通加速化事業 ((一財)下川町ふるさと開発振興公社)

下川町の取り組みはかなり面白いです。結論的には、企画提案型空き家ビジネスを実際に検証したところで成約がありそれでこれから回すというところです。

ビジネス寄りと行政は不一致かもしれませんが、実際にそんな事は言ってられない=経済やビジネスとして回るからこそ出来る仕組みという現場ならではの発想ということが好感的でした。

具体的な内容は報告書を見てもらえればいいのですが、特徴的なのは、所有者と入居者というマッチングでなく、現所有者、オーナー希望者、賃貸入居者をコーディネーターが企画し第三者的な位置取りでうまくつないでいくということです。どうつなぐかは、かなり企画寄りで、つまり空き家所有者の住宅診断をし、リフォームなどのプランを専門家に頼む、そのプランを持って買取交渉をしつつ、新オーナーも確認しつつ、さらに賃貸入居者に対してプレゼンもして意向を確認するという、3者をコーディネーターがまたぐことで、ニーズのギャップを解消するというのが非常に面白いです。

つまり、賃貸希望者→いい物件がないを解消し、現オーナーは買取価格の根拠が見え、新オーナーもどうなるかで活用プランが見え投資改修目処もたち、下川町としては(公社となっていますが)それにより未活用空き家を有効活用することで、移住希望者に充当できるという企画となっています。

これは企画力と構想力が問われ、かつ交渉力も問われます。いわゆるコーディネート力とはこういうことを言うのでしょう。

実際に採用されたモデルプランB自体は借り入れなしの約430万を投資し、賃貸家賃を年間66万で、約6.5年で回収するというモデルです。もっとも稼働率が100%であったり、入居者が退去するなど空室リスクもあるわけですがそのあたりは契約次第になりそうです。もちろんこれが回せれば、7年目から新オーナー、ここでは法人の建設事業者であるのですが、の収益となっていく流れです。

課題にあがっていたのは住宅診断費用をどうするかでこれは簡易なものでは数万円、おそらく数十万はするのかなと想定します。その回収をどうするかというところです。成果型で新オーナーから徴収するのもありかもしれません。もちろん現オーナーからもありでしょう。

他には書かれてないようですが、そもそもコーディネーターの企画力が問われるので再現性があるかどうか、仕組み化できるかどうかもありそうです。当然そのコーディネータの費用をどうするか、企画料としてもらえないのではないかというところですよね。移住促進というところで投資気味にやるしかないのかもしれません。

空き家ビジネス的な視点でも、投資的な視点でも、興味ある方は見てみると面白いかと思います。

空き家ライブラリー(情報ステーション)

空き家ライブラリーは民間スペースなどを図書館化する活動をしているようです。そこで空き家を利活用するという企画が今回の事業概要となっています。空き家の募集から始まり、最終的には書籍を半有し、それらのやり方のマニュアルも出していくという流れです。

早い段階で空き家が見つかりそこを民間図書館として活用する流れが出来たのは良いと言えそうです。

空き家発掘のチャンネル開拓および活用事例の整理事業(瀬戸内市移住交流促進協議会)

啓蒙やパンフレットや講習、空き家バンク登録など片っ端からやっていく姿勢が面白いと思いました。一方で開拓という点での成果は疑問に残るという印象です。一つだけ空き家発掘(ニーズはあるのに供給する空き家がないため)ということで、介護士背うつや医療機関等へのパンフレット設置がいくつか出来たということでしょう。

パンフレットは取材に基づいた瀬戸内市のリアルな事例を収集(33ケースあり)しており、非常に興味深いものです。空き家活用事例集で閲覧出来ます。

スポンジ化が進む旧市街地への居住誘導を目指した、敷地整序型による居住スタイルの提案(高岡市空き家活用推進協議会)

あまり把握しづらかったのですが、要するに魅力的なとくに若者に対して住み替えやすいような住まいや居住スタイルを作ってそこに住んでもらう。同時に立地適正化計画等で居住エリアが決まってくるのでそれも見越したものということと捉えました。

成果物は、情報データベースやモデル敷地での暮らす設計のアウトプットとなっています。

ランドバンク(小規模連鎖型区画再編事業)手法によるプロジェクトチーム型利活用検討事業 (NPO法人つるおかランド・バンク)

単独の空き家建物を利活用でなく、隣地などを合わせたり、視野を広げることで価値を生み出すということで鶴岡市のランドバンクはよく耳にします。

各種専門家やコーディネーターがチームを組んでトライし、AチームとBチームでそれぞれの取り組みがまとめられています。得られた課題が非常に実務的で興味深いと感じました。

具体的には成果物としてランドバンク手法によるプロジェトチーム型利活用検討事業があるのでそちらで閲覧出来ます。

とくにAチームのほうが対象面積と関わる地権者も多いためボリュームがあるレポートになっていますが、印象に残ったのは良いアイデアやスキームがあっても、ひとりひとりの地権者の意思決定スピードや熱量が時間が立つと薄れていくということです。つまり出来ないわけではないが、やるパワーが有るときに一気にタイミングをはかってやるみたいなことも大事であるし、なかなかそのタイミングも難しいということを閲覧していて感じました。

非常に価値がある取り組みであり、こういった公益性が高い取り組みや事業が出てくるのは良いことではないかと感じました。

万代・天明町・沼垂エリアリノベーション事業 (株式会社T-Base-Life)

新潟市の天明町での取り組みです。面白かったのは地元クリエイターがポップアップショップのように、期間限定でお店をやりたいニーズがあったということです。取り組み自体は統計データあり、調査あり、Webサイトありと盛りだくさんですが、最も印象に残ったのは、オーナーや地権者の単独マッチング(土地活用者との)をすると、近隣トラブルにもなりやすいという視点でした。

地元性もあるかもしれませんが、たしかに自分の土地なら何をやってもいいということは言えますが、一方で駐車場にするとやはり今まで近隣にあった家に迷惑をかけるかもしれないなどリスクやトラブルが生まれます。コミュニケーションが出来ていればありえない話ですが、それがなかったりというところや実際に共有道路をまたぐなどはトラブルでしかないでしょう。

調布市における空き家流通促進モデルの構築(東京都調布市)

大阪の枚方市などを研究してベンチマークし、実際に調布市でも調布市、京王電鉄、多摩信金という3者で取り組んでいく事業検討のための取り組みです。2018年度はモデル構築、2019年度は実証実験、2020年度に本格導入していく流れです。

この話は調布市とミサワホームでの取り組みが、東京版の先駆的空き家対策事業で採用されていたというところの流れもあるのかなと感じました。部署が違うとかはおいておいて。

電鉄事業などのインフラ、信用金庫などの地域金融の役割は急速に変わっていく(なくなるということでなく)こともあり、今後どういう取り組みになるかは注目したいですね。

地域福祉事業の展開に向けた空き家活用のケーススタディ(認定特定非営利活動法人 まちぽっと)

福祉事業を行う事業者にヒアリングをして空き家をどう探したかなどから法制度への提案をしていく土台づくりという取り組みです。

福祉事業とは、グループホームやデイサービス、学童保育、居場所カフェ、就労支援等様々です。課題感としては例えば空き家は住宅なので事業用途となると用途変更となり固定資産税が3倍となってしまうことでより負担になる(一方で収益が上がるわけでもない)という話です。こういう状況であれば福祉事業で活用するなら固定資産税の減免ができないかという政策につなげていくわけです。

この取組も公的性=福祉であるということで今後増える空き家とその用途が福祉的事業ということで非常に有意義な内容だと感じました。

取りまとめたガイドブックは無料で閲覧出来ます。「空き家の福祉活用事例ガイドブック」発行 ー無料ダウンロードできます!

財産管理人制度・古民家活用促進検討事業 (八尾市)

財産管理人制度における予納金の低減を目的とした在担当課との連携マニュアルが興味深いです。なぜ予納金低減につながるかは、財産管理人となった人の仕事を減らすことで無駄なお金を減らせるということなのでしょう。

実際に一般的には30万円から100万円といわれる予納金が20万円で抑えられたとあるのですが、課題として家庭裁判所が判断するものであって同様のマニュアルで同じようなやり方でも「低減」できるわけではないという留意点が書かれています。とはいえ、そのような取り組みをすることでやり方や他のアイデアが生まれるかもしれないので、大いに意味があるのではないかとも感じました。

報告書にもありますが、予納金を納めないといけないので、それが捻出できないからこの制度を使えないということになっているのが背景としてあるわけですね。このあたり制度の細かい点で色々あるのだといつも気付かされますね。

取り組みを見て感じたこと

とくに注目は共通課題の解決としての取り組みでした。実際に取り組み自体をやる、社会的意義まであるところは当然今までの活動や取り組みがあることが出来るといえます。

悪手になりがちなのはこのような補助事業があるからやるというお金ありきの視点です。順序が逆でなぜやるか、課題は何か、それに対して何をやるかというところで取り組みとしての事業や企画や検証としての調査があるわけですね。

志が高くかつ実践的かつインパクトがあるようなそういうキラキラした企画や事業であっても、結局はやってみないと分からないでしょう。共通課題であると認識したものがではすぐこれで解決できるかというとそう簡単でもないわけですね。とはいえ、何もやらないとまた何も生まれない。

そういうジレンマを感じながらも手を動かして考える人がいることは評価出来るのではないでしょうか。その場合こうあるべきという一定のやり方でなく、社会の様々なプレイヤーが関わることで思わぬヒントやアイデアになるということが期待できるし、そういう意義があれば税金も有効活用していると言えるかもしれません。

空き家における取り組みを事業報告と一定年数(1年間)で可視化されることってなかなかありませんから、ぜひ興味ある人は、空き家所有者、空き家事業者等多くの人が閲覧されることが望ましいのではないかと強く感じました。

本記事がそういう興味のきっかけになれば幸いです。

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