政令指定都市の空き家等対策計画と取組状況

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名古屋市は空き家実態調査はなく、あくまで市民通報→確認→対応という通報トリガー的な方法で把握されています。これは都市の規模や実態からその対応で十分であるという考えかと思います。では、他の政令指定都市ではどうなっているか気になったので調べてみました。

政令指定都市とは

普通地方公共団体の中で市町村において、人口50万人以上の市から政令で指定された都市のことを指します。

総務省の地方公共団体の区分で詳しい説明があります。簡単にいえば指定都市の方が事務の範囲が広いと言えそうです。

政令指定都市は、現在名古屋市も含め20市が全国にあります。

政令制定都市20市一覧

上記から引用すると、カッコ内は平成27年時点の人口(単位は万人)のようですが、

  • 札幌(195)
  • 仙台(108)
  • 横浜(372)
  • 川崎(147)
  • さいたま(126)
  • 千葉(97)
  • 相模原(72)
  • 新潟(81)
  • 名古屋(229)
  • 浜松(79)
  • 静岡(70)
  • 大阪(269)
  • 神戸(153)
  • 京都(147)
  • 堺(83)
  • 広島(119)
  • 岡山(71)
  • 福岡(153)
  • 北九州(96)
  • 熊本(74)

の20都市となります。

仮説

その前に今回は調査という意味で仮説を立ててみます。

調査前の仮説は、

名古屋市などの政令指定都市は空き家対策としての実態調査は市民の相談や通報ありきであり、全数調査や実態把握調査は別途やってない。全数調査のコストをかけるよりも、そもそも空き家数の実数が多いためその対応にコストを使ったほうがいいためで、放っておいても相談・通報があり対応が求められるということになる。

という想定です。

ここで検証すべきは、

  1. 空家等対策計画があるかどうか
  2. 空家数の把握は何をもって判断しているか(通報トリガーか、実態調査の運用か)

です。

空家等対策計画で、名古屋市では明記されていますが、例えば宅建協会や各種専門家との連携や協定などで補うというのも特徴です。これもコストをかけない工夫ですが、協会等の事業者にもメリットがあると言えます。

具体的に、これらをやっているかどうかを各自治体のウェブサイトを見て判断出来ます。空家等対策計画を見ていって、空き家数をどう算出しているかというところを見ていきます。

空家等対策計画の有無

では、仮説検証に従って、上の政令指定都市の空家等対策計画があるか、何をもって空き家数を把握しているかを調べてみます。リンクは自治体の空家等対策計画がダウンロードできるページに対してです。

空家等対策計画はあれば計画書があるので分かりやすいです。空き家数の把握については、同計画書に言及があるのでそこから分かりそうです。

ついでに特定空き家の数も分かる範囲で書いてみました。

留意点

  • 空家等対策計画は概要でなく詳細なPDF資料を逐次確認した。とくに、住宅・土地統計調査平成25年版のデータでなく、自治体独自の空き家実態調査等がないかを確認した
  • 特定空き家の件数は市全域なのか、一部(モデルやサンプル)なのかで変わるものの、数値自体が参考になるため適宜抽出した
  • 記載ミスや調査漏れ等もあるためあくまで参考程度で、数字自体は各自治体の空家等対策計画を参照して頂きたい

自治体ごとの空家等対策計画の有無と特定空き家の数

都市名空家等対策計画の有無空き家数把握方法特定空き家の数
札幌市2016/3作成 市民からの通報・相談2015年時点、295件(特定空き家146,調査中149)
仙台市2017/3作成市民からの通報・相談 2016年末時点:管理不全空き家1,020件(対象が343,管理不全303,改善374)
横浜市2016/2作成2013年に都心部と郊外部を比較する実態調査実施、市民からの通報・相談モデル3区での空き家調査結果:207件(未改善96,一部改善+撤去等111)
川崎市2017/3作成2014年度水道使用状況からの空き家率調査、市民からの通報具体数不明(空き家数分布が多いエリア+通報99件など?)
さいたま市2018/3作成2016年度水道データ調査、市民からの通報2018年2月時点:特定空き家数46件
千葉市2018/7作成2017年度空き家実態調査2017年度の管理不全相談件数529件(110件が特定空家等)、2017年度空き家調査から2,299件→危険度判定より特定空き家等の可能性が高い77件  
相模原市2016/4作成2015年水道利用状況調査、市民からの通報相談2015年11月時点、通報件数138件(解決55件)だが特定空き家等かは不明。水道利用状況も現地調査は机上調査のみ。
新潟市2016/3作成2013・2014年度の空き家モデル調査、市民からの通報相談空き家モデル調査が実態調査と同様の位置付けか。空き家の全数把握はされてないが、モデル調査から空き家率が平均4.6%となっている。
名古屋市2017/12作成市政アンケート、市民からの通報等空き家数全数把握はなし。平成29年度で特定空き家が120件
浜松市2017/4作成市民からの通報等実態調査はなし。市民からの相談件数等はあるが具体的な空き家数等は記述なし。
静岡市2018/3作成2013・2014年の空き家実態調査あり実態調査では約3,000件が目視で空き家と推定。調査概要のみで詳細が見つからず。
大阪市2016/11作成市民からの通報等通報に基づいた平成30年3月時点で未是正の特定空き家が594件。空き家調査については相談窓口+通報でのDB更新がメインか。調査するにも重点エリアなど個別な対応。
神戸市2016/2作成市民からの通報等実態調査は都度行う形の模様。老朽危険家屋という枠で特定空き家に近いものを把握。平成27年末時点で未是正143件あり。
京都市2017/12作成市民からの通報等通報による管理不全空き家の解決率が26.7%(解決254件/要対応案件953件)。空き家の調査については全域調査は困難と考え、重点地区等は個別に対応という考え方。平成20・21年度の京町家まちづくり調査では市内48,000軒のうち10.5%の5,000軒相当が空き家とされている。
堺市2017/3作成サンプリング地区調査、中心部調査、ニュータウン調査で把握。市民からの通報等。各調査で、空き家率は5.1%、0.32%、4.6%という結果。特定空き家等の危険度等の調査のデータはまだなし。
広島市2017/3作成空き家実態調査実施4,200戸の空き家があり、問題がある空き家は約600戸で、特定空き家に近いものは450戸。
岡山市2016/3作成空き家実態調査実施約38万棟のうち、空き家は約8,600棟(空き家率2.3%)。危険度が高いものは約28%で約2,000棟。
福岡市計画なしなし条例や特措法で対応。実際に措置件数はあり。念の為国交省の策定状況で確認したところ計画はなかった。空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について平成30年10月1日時点のP.7参照。
北九州市2016/6作成老朽空き家実態調査実施危険度が高い空き家は651件(調査件数空き家推定は7,296件)。
熊本市2019/4作成空き家実態調査、市民からの通報等 空き家総数は約3700件、老朽度の高い空き家は約100件。

空家等対策計画の策定状況については、国交省のとりまとめ資料で確認できます。全市区町村の約半数で、空家等対策計画を策定~空き家対策に取り組む市区町村の状況について~

結論

政令指定都市における仮説、検証すべきということは前述したような以下の2点でした。

  1. 空家等対策計画があるかどうか
  2. 空家数の把握は何をもって判断しているか(通報トリガーか、実態調査の運用か)

これについて調べた結果を以下にまとめます。

1.空家等対策計画の有無

20自治体のうち福岡市を除く19自治体は策定済みでした。ちなみに国交省の資料では、全市区町村1,741自治体のうち、空家等対策計画を策定済みなのは848で約48.7%です。半分程度ということですね。

2.空き家数の把握方法

これについては、市民からの通報等でいくか、実態調査を何かしらやっているかというところが注目点でした。

19自治体のうち、市民からの通報等での把握自治体は7自治体。何からの実態調査を行っている自治体は12自治体でした。

当然のようですが、空き家実態調査を行い把握する自治体は市民からの通報等も合わせて補完しているといえます。つまり、通報等は前提である+実態調査をしているというイメージですね。

考察

市民通報トリガーで行う自治体は意外に?少ない

もっと名古屋市のように市民通報等で特定空き家を検知していってケアしていくという自治体が多いかと思っていました。想定では7割くらいはあるのかなと思ったのですが、実際は19自治体の7自治体なので約36%でした。6割近い自治体は実態調査で把握をしているということにもなります。

政令指定都市クラスでも特定空き家数が全部わかるわけでない

数値として見えるかどうかということです。実際に不明や分からない件数もありました。特定空き家等の件数がわからないのは5自治体程度でした。市民通報などの件数から調査をすればわかると思うのでこのあたりは把握やコスト等がかかってしまうと後手後手になりそうですね。

これはもはや考え方の問題です。全数調査→把握するというのが良いかどうかでなく、そういうロジックで考えるかどうかです。結局全数調査しても、また定期調査がいるか、または差分を市民からの通報等で補うのが自然でしょう。

問題が起きてないまたは最小限に予防するという意味で無駄なコストをかけないということから、全数調査をしないというのもありです。安くて数百万、数千万円のコストはかかるからですね。

自治体は自身の規模、市民等の考え方から計画していく

行政や自治体というのはワンマン経営ということでなく、あくまで合議制であったり、プロセスがあって成り立っています。そういう意味では、政令指定都市でも考え方が異なる。同様に地域、エリア、規模、何を目指しているかで政策が変わります。

一概に人口だけで言えないわけですが、空家等対策計画の有無、または特定空き家数の把握方法で色々見えてくるのが面白いと感じました。

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