なぜ空き家問題と言われるのに空き家情報が出回らないのかを考えてみた

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空き家問題は完全に社会問題ですが、そこからいえる様々な課題を見ていくと軽い目眩がおきます。問題が大きすぎるからですね。今回は、空き家情報がなぜ出回らないかについて考えてみました。

問題提起

今回は、空き家問題と言われる中で、空き家情報がなぜ出回らないかについて考えてみました。

例えば、よくある疑問として、「空き家がたくさんあるなら、使いたい人がいて使ってもらえればいい。多少安くても使えるし、マッチングすればいいのでは」というものです。

これらに類似した多くの疑問は、一個一個見ていけばいかに難しいかが見えてきます。

問題のある空き家とは

空き家とは一体何かを再度整理してみます。

ここでいう空き家は普段住んでないなど、管理がほとんどされてないように見られるものです。平成25年の住宅・土地統計調査では空き家数約820万という数字がよく見られますが、実際にここから「その他の空き家」と呼ばれる320万が対象となります。全国には住宅が人口の半分程度の6000万戸ほどあるので、その他の空き家割合自体は5%程度です。

5%というと少なく感じますが、結局対応策がなく放置であるのと、空き家自体の影響が大きすぎるというのが問題でしょう。(ボロボロの空き家などが近隣にあれば問題だと感じやすいのではないでしょうか)

その他の空き家が320万あるわけですが、このうち腐朽・破損ありという物件に問題があるもの(それ自体で使えないわけでないですが、そのまま使うには問題があると考えます)は、約100万あります。問題がないものは200万ちょっとです。

これらは統計データなのでそのままピッタリではないですし、実際に市区町村が独自に行った調査ではもっと問題がある空き家は少なく出てきます。

ただ、100万戸くらいはまずは問題があって、そもそも賃貸、売却、別荘的にも使ってないものがあるということが分かります。

100万戸の内訳

問題がある(腐朽・破損がある)その他の空き家は100万程度ということですが、建て方の用途では、戸建てが82万、長屋7万、共同住宅15万となっています。マンションで問題があるというのはかなりの老朽化だと思いますが、ここでは8割ほどある戸建てに注目してみます。

また、この82万ある戸建てのうち、木造が64万であり、8割が木造戸建てとなります。

何かしら腐朽破損がある空き家で、木造のものは64万程度はあると考えられるわけです。100万→64万と大分減りました。

空き家バンクの掲載物件≒出回っている空き家物件情報

ここで視点を変えて、そもそも商品化されている中古戸建てはどれくらいあるのでしょうか。そもそも市場があるのか分かりづらいですよね。

空き家というのは低廉不動産と考えられるため、例えばsuumoで500万以下の中古戸建てで調べてみます。すると、愛知県でなんと9件です。価格上限がないと2,728件でした。もちろんsuumo以外のポータルサイトもあります。同様に東京都では、6634件に対して、500万以下の中古戸建てはなんと1件でした。

全国版ライフルの空き家バンクサイトで登録物件数が約6,000はありました。全国版空き家バンクが試験運用開始1年なので再度調べてみた(本番試行からは5ヶ月)

不動産ポータルサイトに掲載されるものは、売れることで仲介手数料が得られる見込みがあるものが掲載されるためですが、いかに低廉不動産が市場がないかが分かります。

もっといえば、suumoなどの不動産ポータルにはそういった不動産はないとすると、全国版空き家バンクなどの空き家バンクポータルの情報がメインとなります。

つまり、6,000件が全国の情報が取得出来るものとなります。

空き家バンクの物件はどんなものか?

自治体の空き家バンク情報を一個ずつ見ればいいわけですが、さすがにそれは時間がかかるので、簡単に見てみます。

例えば全国版ライフル空き家バンクにて、愛知県で93件あるものの、売買居住用で46件です。しかもこれらは価格が1000万を超えるものがあったり(売れるかは別)、それでも外観が良いとはいえず、価格付けも売れる価格ではない、実際は応相談で交渉していって相当安くなると考えられます。

もっといえば空き家バンクに掲載されているものは、一般の不動産売買とはかなり異なっており特殊といえるわけです。

ここで未掲載自治体が多くあると言いたいのですが、大体の自治体で空き家バンクがあるところは、掲載していると考えられます。

では、その空き家バンクに掲載されると成約するかですが、登録物件に対して半分程度が成約するようです。つまり、1自治体で年10件空き家バンクが登録されると、5件程度は成約するということです。これらは平均ですので全くされない自治体もあるはずで、ものすごく成約率が高いところもあるわけです。

全国規模で言えば、6,000件の空き家バンク物件で、3,000件がマッチングするというのは大きな数字のように思えます。一方で、その他の空き家は320万あり、戸建てに限れば、230万あるようです。腐朽・破損がないものは、140万程度あるということで、ここから先程の3000件が成約しても0.2%にしかなりません。

成約しないよりはしたほうがいいわけですが、当然発生する空き家数に追いつかないのではと考えられます。つまり、流通して頑張って成約しても、意味がないとすら思える少なさになります。

 

国交省の資料では活用できそうな空き家は48万戸

空き家等の現状についてという国交省の資料では、p.3にあるように、住宅・土地統計調査からのデータを使って使えそうな空き家を出しています。それによると、「駅から1km以内で、簡易な手入れにより活用可能なその他空き家」が全国で48万戸といっています。

使える空き家が48万戸もあるわけですが、全国版空き家バンクでは1万件も出回っていません。逆にいえば270万のその他の空き家は活用がしづらいというわけですね。

現時点で使えそうなものが48万あっても、流通しているのが1万に満たない。先程の計算より精度が高いですが、これでも、2%程度しか流通していないことになります。

空き家情報が出回らないのはそもそも売れないから

ごく当たり前の話になりました。実際に100万以下で仲介しても、5万円程度の仲介料です。また最新の改正では18万までなら調査費等で請求できるとありますが、請求してもいいけど「オーナー」が支払うかは別物です。実際にどうなっていくかは分かりません。

不動産業者は不動産仲介などが生業ですから、仕事として成り立つものを選びます。3000万の物件を売るのよりも困難(条件が厳しく、買いたい人がいない、そもそもマッチングが大変など)な低廉不動産を扱うモチベーションになりません。労力もそれほど変わらないとしても、お金にならないからです。

直接売る売買マーケットはあるが小さすぎる

不動産業者がどうでなく、空き家バンクのようにオーナーが直接売っていけばいいという考えは分かります。実際に家いちばなどがそうですが、これらも件数はごくごく限られています。むしろ購入者がレアであり、出すオーナーもレアといっていいでしょう。レア同士のマッチングでは大きな影響にはなりません。

こういったサイト運営は仲介業が利益にはほとんどならないので、利益になるからやるのでなく、他のモチベーションでやることになります。一般の不動産業者はまずならないでしょう。またやっても利益になりづらいからやらないんですね。

売りたい人はみんな困っている

ただでもいいという人で、地元不動産業者に頼んでも断られ、そういう人が結果的にリライトのような会社にたどり着く気がしました。

逆に不動産業者でない人に頼らずに空き家を売ることはかなり困難でしょう。自己不動産を売るなら宅建業法は関係ないですが、それでも売るものが不動産なのでかなり警戒されるでしょうし、そういう人に出会えません。

出回らない口コミや足で探すことが近道か

どうしてもほしいならネットに情報はないと考え、自らの足で探して交渉というのがアナログですが最も近道な感じもします。ただこれもトラブルにならないために、契約をプロを通して行う、経験者がいればアドバイスしてもらうなどが考えられますが、なかなかそういう人が周りにいないのが実際でしょう。

オーナーが売ろうにも世間の目で出来ない

田舎などにはある話ですが、売家とか売地とかの看板を掲げると落ちぶれたとか、色々と良からぬ噂を立てられるなどです。良い噂にはまずならないでしょう。これは独特の世間体などがあり、つまり「自分の意思」でやってどうにかするということは基本ですが、関係ない人が色々と口を出す構図ですね。

もちろん関係者ならいいですが、全く関係ない人があらぬ噂を立ててそこに居づらくなるとかであればなかなかできないですよね。

ちなみに、こういう場合は、誰かに頼まれたから仕方なくやったんだという体裁を取るとスムーズのようですね。

ネットへの抵抗感

多くのオーナーは相続して若い世代出ない限り、年をとっています。だからネットで物件売買などをするということに抵抗があるはずです。これはあえて「自分の物件を売りに出している」ことを第三者に言うことでメリットがないからです。詐欺的な話などをもちかけられたりするリスクや先ほどの要らぬ噂にもなりかねません。

だからこそ、理想は誰にも知られないように(もちろん買いたい人には伝えたい)、静かに処分することでしょう。が、それはさすがに出来ないでしょう。このジレンマが多くの人にはあるのではないかなと考えています。

一部は放置してしまう

経済的に厳しいとは、管理費用がない、固定資産税などの税金滞納とか、取り壊すべき段階でも取り壊し費用がない(またはローンを組めない)など色々な事情があるケースです。この場合は、確かに放置になります。

しかしこのケースは全国レベルで数えていけば、特定空き家のケースでひどいケースです。ここまでのものはそこまでないと考えています。多くは何かしらしたいが、うまくいかないなというところの状態でしょう。

仲介業は見合わないし、売る側も商品化までが困難

結論的には、2点です。

1つは、プロである不動産業者がまずやりたがらない点です。利益がないからですね。

もう1つは、空き家オーナーがもっている物件が直ちに売れるものではない場合商品化まで道のりが遠く時間がかかるからです。かつ売るためにはプロの介在が不可欠ですがそこまで粘る必要があるからです。

あえて大変なことをやろうという人はなかなかいませんから。

空き家情報が出てこないのは、まず市場がない点で「私も売るの手伝う」という話にならないからですね。むしろ逆です。問題なのは分かるけどどうしたらいいかでプロも困るし、プロ中のプロがやっとなんとかしているという印象です。

では、不動産業者が悪いかというと全くそうではないでしょう。ビジネスに見合わないことをあえてやるほうがおかしい、ボランティアをなぜやるのか?と考えるのが妥当だからです。

では、オーナーが頑張って自己所有物件だからなんとかすればいい話だよねで終わるのでしょうか?そうではないでしょう。出したくても出せないし、商品化できないからこそ、プロに相談したいわけですが、プロは断るから、話せるプロを探すまでが時間がかかります。

プロでも低廉不動産に対してどう商品化していきどう売るかは相当のベテランか、経験者でないとほとんど何も出来ないのではないかとすら感じます。つまり、プロ中のプロという人が限られるということですね。

解決するにはどうすればいいか

やや悲観的になりますが、現時点では不動産業者の低廉不動産に対するモチベーションをアップしていくというくらいしかありません。

もちろん、直接売買の市場が出来ればいいのですが、一方でその場合も使える空き家としての48万戸が相場よりも当然安く、しかも使えるレベルにある場合だけです。この時、ジレンマとして空き家オーナーが改修費を出して商品化するかどうかですが、これもまた不動産知識や商品化の知恵が必要です。素人が簡単に出来るものではないと考えています。

また空き家オーナーがこの場合は売ろうとしているがという積極的な姿勢のある人に限られます。管理をしている場合は問題になりづらいですが、長期的に見ると管理は維持以下になるため、どういう判断をするかが求められます。これはどちらかといえば自己不動産の経営に近くなんとも個人の考え方に委ねられます。

そこを考慮すると、勝手に何かはできないわけで、だから啓蒙活動みたいになって弱くなっていくのかなと考えています。とはいえ強制的に売買するということはできないのですが、強制力が仮にあっても商品価値を感じられないものはやはり売れません。

一つ方針を立てるならば、

  • 空き家オーナーが不動産に関する知識や危機意識を学ぶこと(素人ではなかなか難しいこと)
  • 不動産業者などのプロが少しでもメリットを感じられるようにすること(表彰とかでもいいと思ったりします)
  • 結果的に売りたい人が売れる流通マーケットを作ること、また社会福祉的なアプローチがもっと合っても良いこと(セーフティネットのアプローチなど)

などでしょうか。

一方でものすごく地味ですが、黒子的に、地域で空き家を探してマッチングしているとかそういう活動は称賛していき、感謝を伝えていくことでしょう。または、「見えない」のでなく、そういった地域活動もですが、低廉不動産の活用事例も見える化して、それらがプロ中のプロだけでなく、経験が浅い人や素人でも理解が進むものであればベターですね。

おわりに

空き家問題は一口にいっても色々と切り口があることが分かります。また現時点で問題と言われて法律も出来て何か改善されているかというと、何かこれという解決策はないような気がします。

もちろん、徒手空拳なり、知恵を使って空き家問題に対して有効な方法を考えてトライしている人もいるのだとは思いますが、なかなか大きな問題ということを感じ入ることが多いです。

空き家がいっぱいあって要らないものあれば売ればいい、安く売ればいい。ということを冒頭で書きました。しかし、世の中には売りたい人がいても買いたい人がいなければ成り立ちません。買いたい人は、ノーリスク(もちろんリスクがないほうがいいですが)でタダに近いかたちで買えると思っているのかなと感じます。それらは幻想です。

まず不動産ですから固定資産税等のランニングコストがかかりますし、維持管理も必要です。誰がそれをやるかというと、既存で自己所有物件や賃貸入居であれば、その人がやるか、誰かが管理することになります。

一方で人は減っていき、社会インフラ(下水道や病院、またはスーパー等の商業施設)が負担感が増してくると、そこに住むことが贅沢になります(自給自足とか、ライフスタイルを確立している人は別)。

空き家問題自体は「単に世の中の空き家が余っている」とか「管理が出来てない人が多い」とか、そういう表面でなく、様々な問題の蓄積で、また重層的な課題だと感じています。

今回は、空き家問題を知れば知るほど感じてしまうことを少しアウトプットしてみました。決してこのまま何も解決策がないとは思いません。しかし、なかなか一筋縄ではいかない問題だと多くの人が感じてもらえるとまた社会の認識が変わってくるかもしれませんね。

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