空き家の行政代執行と略式代執行の違いについて考えてみた

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

いくつかの空き家解体事例が国交省の資料であがっていました。以前はあまり気にならなかったのですが、特定空き家の最終プロセスである行政代執行と略式代執行の違いについて調べて考えてみました。

特定空き家のプロセス

おさらいですが、特定空き家と認定された後に、助言・指導→勧告→命令→代執行(又は略式代執行)という流れです。勧告時点で特例から外れるので増税になりえます。

特定空き家に対する措置実績を調べてみたでも書きましたが、直近1年でこれらの実績は、代執行が12件なのに対し、略式代執行が40件となっています。

素人的にいって、「略式」だから代執行より軽く出来たり、小回りが効くという推測です。

代執行と略式代執行の違い

国交省サイトに空き家対策に関する情報提供→地方公共団体の空き家対策の取組事例2.平成29年度調査(平成30年3月末時点)が「地方公共団体の空き家対策の取組事例2」という資料であります。

実際の事例をあげているので代執行と略式代執行を比較していけばある程度わかるのではないかということで見てみました。ぜひ資料を見てみてください。

代執行事例

  • 危険状態である
  • 所有者は特定出来ている
  • 費用回収方法が差し押さえや公売、所有者への請求

略式代執行事例

  • 危険状態である
  • 所有者が特定できない(確知出来ない)
  • 回収方法は財産管理制度を活用

特定空き家としているので、近隣への危険があるというのはどちらも共通です。

ここでの違いは、1つです。(回収方法も入れれば2つですが)

つまり、所有者が特定できたかどうかです。確知とは聞き慣れない言葉ですが「確実に知ること」という意味のようで、所有者が分かっているかどうかというニュアンスですね。

代執行では所有者は分かっているし、コミュニケーションは出来たかはおいておいてやったけど、だめだったときということになりそうです。略式代執行は、所有者を特定しようとしたけどそれがまずだめだったというケースになりそうです。

費用回収方法は、所有者が分かっていれば所有者へ請求できますが、略式代執行であればわからないので、財産管理制度などの活用となります。

財産管理制度は、簡単にいえば、市区町村が裁判所を通して財産管理人(弁護士や司法書士等)を任命して、その管理人を通して該当土地などを売却して費用を回収するものですが、まだまだ勉強不足のところです。また調べてみます。

自治体視点での違い

行政視点での違いは何かという方が分かりやすい気がします。

滋賀県の高島市の資料では、特定空家等の略式代執行による除却の実施についてで略式代執行を行う旨をお知らせしています。

特定空家等の略式代執行による除却について内の表がわかりやすく、

略式代執行

  • 所有者等が確知出来ない場合
  • 自力執行権がない
  • 費用は、財産管理制度で回収
  • 所有者が判明した場合は、支払ってもらうか、民事訴訟
  • 解体での国補助制度がある

行政代執行

  • 所有者等の確知が出来る場合
  • 自力執行権がある
  • 費用は、強制徴収
  • 解体での国補助はなし

こう見るとすっきりしますね。略式代執行においては、確知できなかった所有者が万一見つかったら任意の支払いや民事訴訟が出来るようですが、このケースが有るかは不明です。まずなさそうですが。

自力執行権は初めて知ったのですが、債権者=自治体側が強制的に財産を取り立てる権利のようです。略式代執行はそもそも所有者がわからないので執行できないわけですが、行政代執行は所有者がわかる分強制徴収が可能ということですね。

所有者が不明でも活用出来るので略式代執行の方が多く用いられるという理解です。

ただ、略式代執行はスピードは早いし問題対応が出来るのはいいのですが、費用回収が財産管理制度でどこまでスピーディーにできるかというところが課題となります。早いけど費用が賄えないということですね。

行政代執行は遅くなるけど、強制力があるのが強みというところでしょうか。公売等で回収できるかまで調べきれてません。

特定空き家のガイドライン

国交省の空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報にある、「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)で確認してみます。

法第 14 条第 10 項の規定により略式代執行をするための要件は、

  • 過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができないこと
  • その措置が、他人が代わってすることができる作為義務(代替的作為義務)であること

である。

同資料P.17より引用

1つ目の「過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができないこと」という言い回しが分かりづらいですが、続きの説明にて、

「過失がなくて」とは、市町村長がその職務行為において通常要求される注意義務を履行したことを意味する。

「確知することができない」とは、措置を命ぜられるべき者の氏名及び所在をともに確知しえない場合及び氏名は知りえても所在を確知しえない場合をいうものと解される。

となっています。

つまり、自治体で注意喚起を所有者にしようとしたけど所在が分からない、XXXさんとからしいというのが分かっても所在が分からない場合と言えそうです。

また、

どこまで追跡すれば「過失がなくて」「確知することができない」と言えるかについての定めはないが、少なくとも、不動産登記簿情報等一般に公開されている情報や住民票情報等市町村が保有する情報、法第 10 条に基づく固定資産課税情報等を活用せずに所有者等を特定しようとした結果、所有者等を特定することができなかった場合にあっては、「過失がない」とは言い難いと考えられる。

(太字・赤色は筆者注)

となっています。なぜか否定文になっていて分かりづらいですが、所有者を追跡するかについては、不動産登記簿、住民票等、固定資産税情報を使って特定してください。それでできないなら「過失がなく」「確知できない」と言えるわけです。先程の自治体の略式代執行の事例では「所有者の確知」欄で取り組みが書かれていて確知できない理由が書かれています。

だからこそ、持ちうる情報で一旦調べないと略式代執行はできないということですね。

おわりに

財産管理制度での費用回収できるの疑問は残りましたが、近隣住民や市民の声を無視するわけにはいかず、略式代執行で対応する。しかし費用が回収できないのはまた問題となって、今後どうなっていくかが問われるところです。

調べた結果、代執行と名前はつく「略式代執行」と「行政代執行」は行政が強制的に解体等執行できる点は一緒ですが、細かい権利やフォローが異なるということが理解出来ました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

RSSでもご購読できます。