特定空き家に対する措置実績を調べてみた

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特定空き家に認定されるとすぐに撤去されるわけではありません。ではどれくらいの数が代執行等で処分されているか意外に見る機会がないので調べてみました。

福井県の取り組み

危険な空き家所有者、文書受取拒否という記事では、福井県内の8市町村で特定空き家が152軒あるようです。

特定空き家は助言・指導というお知らせがあって、それでも何もしないと、勧告(ここで固定資産税の軽減特例が解除)となり、それも放置すると命令となり、最後は代執行または略式代執行となります。つまり、特定空き家の解体等が行われます。

自治体の課題としては、指導は出来ます。しかし、そこからどうするかの判断が難しいことです。勧告をすることで、特例解除となるため固定資産税の増税可能性が高くなり、危機意識を所有者に高めることができます。

一方で勧告をすると、最後の代執行までを完遂することとなるため、勧告をすること=代執行まで見込むこととなります。つまり、勧告するともう戻れないということです。

戻れないとは「所有者が当然措置を取れば良い」のですが、論理的に考えると「助言」「勧告」で何か対応する意思がなければ、放置でしょうと考えられるからですね。

この課題は今回の記事だけでなく何度も指摘されていますが、なかなか打ち手がないところです。

全国の特定空き家の措置数

国交省がこちらのページに資料をまとめています。

空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報の「参考」にある「■空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について(H30.3.31時点)」です。過去の調査結果は平成27年からあります。

最新は、空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について(H30.3.31時点)なので、こちらを見てみましょう。

P.8にあるように平成29年4月1日~平成30年3月31日の措置実績、つまり1年間では、

  • 助言・指導 4,271件
  • 勧告 285件
  • 命令 47件
  • 代執行 12件
  • 略式代執行 40件

となっています。

命令より代執行と略式代執行の合計値が多いのは、おそらくですが、期間内において発生したものであり、例えば昨年度の命令中のものが今期にずれこんでくると推測します。

ついでに、過去のデータも載っていますが、助言指導→勧告→命令→代執行,略式代執行の順ですが、

  • 平成27年度 2,890→57→4→1,8
  • 平成28年度 3,515→210→19→10,27
  • 平成29年度 4,271→285→47→12,40

という形で、措置実績は増加傾向にあります。

助言・指導に対する勧告等の割合

全体を掴むために、平成29年度で単純に助言・指導を100としたとき、それぞれ勧告や命令、代執行の割合はというと、勧告は6%程度、命令は1%、代執行+略式代執行で1%となります。勧告が代執行を見込むとありますが、これはおそらくですが、標準的に勧告から代執行まで5ヶ月程度(姫路市の資料などを参照)かかるので、そのずれではないかと考えています。

福井県の記事にあったように「指導」止まりとは、福井県だけでなく、そもそも全国的な傾向として、ほとんどの特定空き家が指導で止まっているといっていいでしょう。

「期間がずれているだけ」とも言えるのですが、措置実績の量が多く過去3年の合計で、10,676件の特定空き家に対する助言・指導をして、代執行+略式代執行の合計が98件です。

つまり、特定空き家の1%ほどしか行政代執行にはならないということですね。逆にいえば、現状これ以上行政負担で代執行をしていけるかというと厳しいわけで、代執行を増やせばいいというのでなく、特定空き家を所有者が自主的に対応してもらえることを目指すしかないことになります。

助言・指導で改善する割合

特定空き家と認定されて助言・指導されるわけですが、どれくらいそこで改善されるか。あまり調べきれていません。

名古屋市が、空家等に関する対策の実施状況等についてを公開しているのでそれから推測してみましょう。

名古屋市空家等対策の推進の中に、「本市の空家等対策の実施状況等について」で、PDFがあります。名古屋市では空家実態調査等はせずに、市民からの通報や所有者からの相談等をきっかけにして、実地調査をしてという対応をしているようです。

下記は、相談件数→調査・確認した空き家等→特定空き家等→不適切管理状態の解消(特定空き家でなくなった)という数字を並べてみました。

  • 平成29年度 1,234→1,109→120→42
  • 平成28年度 1,114→1,027→139→41
  • 平成27年度 1,210→1,116→205→69
  • 平成26年度 816→736→208→41

資料では物件数には条例制定以前からの把握物件も含むとありますが、累計値かどうかがわからないですね。

特定空き家が不適切管理なままであるという継続状態にあるのは、

  • 平成26年度 130
  • 平成27年度 88
  • 平成28年度 71
  • 平成29年度 56

となり、これが特定空き家の累計であれば、特定空き家自体は減っていることになります。ただ特定空き家の発生数自体は増えているので、増えた分対応してもらっている、改善してもらっていると考えられます。

以上のデータからは、単純に平成29年度で120の特定空き家で対応されたものが42あるので、35%程度は解消されると考えられます。

名古屋市においては、先程国交省のデータからは勧告の数は分かりませんが、命令や代執行実績がないので、助言・指導が主な対応と言えそうです(愛知県では、瀬戸市が平成29年に命令1件のみです)。

名古屋市のデータだけですが、助言・指導の段階で、3割くらいの所有者は是正するということが少しだけ見えてきました。

福井県の坂井市の勧告

上の記事で、坂井市は特定空き家12軒に対して、8軒に勧告とありました。危機感のためとありますが、この割合は約67%となり、指導で止まるところが多いことを踏まえると相当強い意識が感じられます。

もちろん勧告となると、特例解除となり、所有者もいよいよかと覚悟するかもしれません。ただし、そのまま代執行となると回収しづらい=行政負担になるため、結局は市民の税金を使うことになります。この判断がとても難しいなと感じました。

おわりに

今回は特定空き家等の措置実績ということで、自治体の動きについて調べてみました。

特定空き家の数に対して代執行される割合は相当レアケースといえます。一方で今後予算的にどんどん進められるわけではないということでジレンマが生じます。

当然ですがこれは行政対応での話です。特定空き家に認定されようが、所有者が意思を持って何か対応を考えれば「強制執行」は避けられるかもしれません。また経済合理的にも、ボロボロの空き家は要らないが土地活用をしたいとか、うまくマッチングができれば所有者も購入者も行政も近隣住民もWINとなるため、そういった流通やマッチングがやはりうまくやれればということを強く感じました。

代執行をした場合は、徴収として土地を公売したり、然るべき手段で回収する手間がかかりますし、また固定資産税が減ることになるため、行政的にも負担がかかるしおいしくはないんですよね。あるのは安全上危険なものを取り去ったというところになるだけですから。

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